悪人を倒せば世界が平和になるという映画は作らない――宮崎駿監督、映画哲学を語る(前編):“ポニョ”を作りながら考えていたこと(2/4 ページ) 地域社会をテーマにして 10分ほどの講演後に設けられたQ&Aセッション。内外からの30人ほどの記者たちがさまざまな質問を宮崎監督に投げかけた。 ――私はイングランドの田舎に実家があります。近所は農家で、子どもたちは昼間牛や羊の面倒をみるなどの仕事をしているが、夜にはあなたの映画を見る。彼らは現実世界とバーチャル世界を区別してないように思えるのですが、あなたは現実世界とバーチャル世界の違いについてどうお考えですか? 宮崎 今のお話はとてもいいお話で、私はとてもうれしかったのですが、私が先ほど話したのは、この国ではバランスが崩れているということなのです。実際に面倒をみる羊や家畜がいるわけではなく、裸足で走り回る地面を持たないで、バーチャルなものに取り囲