『ゴールデンカムイ』に描かれなかったもの 以前私は下記の記事で、野田サトル『ゴールデンカムイ』には「世界の全体」が描いてある、と書いた。それは「例えば「愛」と「欲望」と「暴力/権力」と「生命」と「歴史」とか」の、世界を構成する諸要素が、物語とアクションの中に凝縮されて描かれているように思えるということだった。 pikabia.hatenablog.com 今もその印象は大枠では変わっていないのだが、漫画が完結して振り返ると、いくつか「これは描いてなかったな」と思う部分があり、今回はその部分について書いてみる。 ゴールデンカムイに結果的に描かれなかったものの中で特に重要なのは、日本という国家機構そのものだと思う。具体的には明治政府である。この漫画には軍隊として鶴見中尉率いる第七師団が登場するが、終盤に顕著なように、彼ら自身は明治政府に対する反逆者として描かれる。 してみるとこの漫画は基本的に
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