火葬だけ…広がる「直葬」 弟は「そちらでお願いできませんか」 簡易宿泊所が集まる東京都の山谷地区で8月、81歳の男性が亡くなった。遺族以外の人たちによる10分間にも満たない簡素なお別れの会の後、火葬された。都内では、こうしたほぼ火葬だけの「直葬」が増えてきており、葬儀全体の3割を占めると言われている。 社会のきずなが失われてきたことが背景にあるが、経済的な理由などで直葬を選ぶ遺族もいるという。 「弟さんがいたんですか…」。山谷で簡易宿泊所を営む女性(67)は、亡くなった上田貴司さん(仮名)に親族がいたことを伝えられると驚き、懐かしむように目を細めた。上田さんは、この宿で約14年間を過ごしたが、一度も家族や仕事など過去に触れることはなかったという。 寡黙できれい好き。毎夕、手ぬぐいを下げて銭湯に行くのが日課だったという上田さん。「手紙が来たことはない。宿の誰かと遊びに行ったり、話し込む