経済のプリズム No115 2013.7 1 我が国企業部門のISバランスについて 企画調整室 客員調査員 後藤 康雄 (三菱総合研究所主席研究員) 我が国では長らく経常黒字が続いているが、マクロ的にみて経常収支とは、 一国全体での貯蓄と投資の差額に一致する。したがって、経常黒字が続いてい るということは、国全体としてみて貯蓄超過(または投資不足)の状態が続い ていることを意味する。本稿では、我が国の貯蓄投資差額の動向を整理し、特 にその動きを大きく左右する企業部門についてやや詳しくみていくこととする。 そこでの問題意識としては、我が国の貯蓄投資差額は貯蓄が過大なのか投資が 過小なのか、また今後の貯蓄投資差額の見通しに対してどのような含意がある のか、といった点を中心に考えていくこととする。 1.経常収支とISバランスの恒等関係 貯蓄投資差額は、マクロ経済分析においては極めて重要な概念であ