1973年版はリアルタイムで観た。原作も図書館で借りて読んだ。小学生が一般書架のカッパノベルスを、である。実は相当に思い入れがあるのだ。 小林桂樹と言う役者を知ったのも73年版であり、田所教授は僕の中では小林桂樹以外は考えられない程の嵌り役だった。 それは、実質的に田所が73年版の主役だったからに他ならない。 日本人の中で唯一"日本沈没"に気づき、それを訴え、未曾有の危機に警鐘を鳴らす。突拍子もないと信じぬ政治家達に食ってかかるその目。答えは見えているのに式を提示出来ない、結末が明白なのに証拠が無い、その葛藤。日本の末路を見いだしてしまった者として、一人の日本人として、沈み行く日本と運命を共にする、火山灰で真っ白になった顔…。 田所が「日本人の日本への想い」を昇華する事によって、映画に太い竜骨が通ったのである。 さて、観る前は期待と不安が乱泥流のように渦巻いたリメイク版である。樋口監督も前