「正しい退勤時間は書かないで」。大阪府内の大規模園で非正規職員として働いていた40代の女性保育士は、上司からの一言に耳を疑った。保護者に人気の保育園を支えているのは、サービス残業を強いるブラックな環境だった。 サービス残業は当たり前 数年前まで勤務していたのは、幼児英語に力を入れ、体操教室もあって常に定員が埋まる人気園。運動会や発表会に加え、ひな祭りやクリスマス会など季節の行事も充実していた。 仕事中の休憩時間はほとんどない。晴れた日は園児を外で遊ばせ、室内に戻ると絵本の読み聞かせや玩具を使った遊びが始まる。 園児が昼寝をしても、書類仕事が待っている。毎日、保護者に渡す連絡帳にその日の様子や気になる点を書き込む。同じクラスでも月齢によって園児の成長速度に大きな差があるので、それぞれに合わせたカリキュラムも1週間単位で考えた。 教育熱心な保護者に喜んでもらうためか、運動会や発表会は「映える」
<右>卒業式に臨んだ際の髪形=保護者提供(※ピアスの穴を開けたのは卒業後)<左>編み込みをほどいた普段の髪形=兵庫県姫路市で2023年3月9日午後0時15分、幸長由子撮影 兵庫県姫路市の県立高校が2月に開いた卒業式で、3年の男子生徒(18)=当時=が髪形を理由に卒業生用の席に着席することを認められなかったことが判明した。 「友人との3年間を締めくくる思い出づくりができなかった」。黒人である父のルーツを踏まえた髪形だったが、学校側の答えは「校則違反」。多様な背景を持つ子どもが増える中、専門家は「子どもを抑え付けるのではなく人権尊重を」と呼び掛けている。 教師「校内から出てくれ」 生徒は卒業式を「特別な日」と考え、巻き毛である髪質でも整って見えるよう髪を編み込んだ。「コーンロー」と呼ばれ、アフリカにルーツを持つ黒人文化の伝統であることをインターネットで調べ、父親からも話を聞いていた。 父親によ
VRゴーグルに映し出されている映像。ゴーグルは幻肢痛のリハビリに使われる=東京都文京区で2023年3月7日、宮本明登撮影 東京都文京区にある雑居ビルの一室。アトリエのような部屋では、右肩から先の腕を失った男性が頭にVR(バーチャルリアリティー)ゴーグルを被り、椅子に座っていた。男性の目の前には、赤外線が出る装置が置かれている。 「なるべくゆっくりやりましょう」。指導者から声を掛けられると、男性は頭の中でイメージを始めた。両腕を前に伸ばして手のひらを上に向けてねじったり、両手でボールをすくって穴に入れたり……。それに合わせ、実際の左腕もイメージ通りに動かしていく。 この時、男性が見ていたゴーグルの画面には仮想空間の世界が広がっており、両腕のある男性の分身がイメージと同じ動作をしていた。現実世界の男性の動きを赤外線が感知して、仮想空間の分身に反映させる仕組みになっている。 これは「幻肢痛(げん
米海兵隊は2023年中にハワイを拠点とする第3海兵沿岸連隊(MLR)で最新式の地対艦ミサイルシステム「NMESIS(ネメシス)」の運用を始める。第3海兵師団が明らかにした。海兵隊が本格的な地対艦ミサイルを運用するのは初めて。中国を念頭に、敵に攻撃されるリスクが高い地域で、狙われにくいように少人数に分かれて動く戦術への転換を象徴する装備となる。海兵隊は25年までに沖縄県に編成する第12MLRにもネメシスを配備し、陸上自衛隊の地対艦ミサイル部隊と連携して運用する方針だ。 MLRは1800~2000人規模で、対艦攻撃を担う沿岸戦闘部隊▽敵のミサイル・航空機を警戒する防空部隊▽補給や維持整備を担当する後方支援部隊――などで構成される。将来的に情報収集と攻撃を兼ねる無人艇部隊が追加されるほか、海兵隊が新たに導入する地上発射型の巡航ミサイル「トマホーク」の部隊と連携する可能性もある。第3MLRは22年
2013年に日韓トンネルの早期建設を求める意見書案を可決した対馬市議会=長崎県対馬市で23年2月28日午後4時25分、平川昌範撮影 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の創始者、文鮮明(ムン・ソンミョン)氏が提唱したとされる「日韓トンネル」構想を巡り、トンネルの建設や早期着工を求める意見書や請願書が複数の地方議会に提出されていた。構想は九州と韓国を海底トンネルでつなぐ計画。経由地の長崎県対馬市議会だけでなく、ルートから遠く離れた地方の議会にも出されていた。経緯を探ると、構想実現に向けた機運を高めようと、教団信者が動いた形跡が見え隠れする。 韓国・釜山まで最短距離で約50キロにある国境の島、対馬市。2013年3月、市議会で「『日韓海底トンネル』の早期建設を求める意見書」案が審議された。「日韓トンネルは島国日本とアジア大陸を結び、東アジアの一体化と平和を求める歴史的な試みである」。意見書案では、
東京都世田谷区は、毎年秋に区などの主催で実施している「世田谷246ハーフマラソン」について、性別が男女どちらでもないと自認する人のための新たな選手枠を創設する検討に入った。10日の区議会で、区の担当者が明らかにした。 性自認が男女のどちらにも当てはまらない人は「ノンバイナリー」や「Xジェンダー」と呼ばれている。米国のボストン・マラソンや英国のロンドン・マラソンなど海外の大会では、男女別のほかにこうした「第三の枠」を作る動きが広がっているが、国内の大規模な大会で導入されるのは初めてとみられる。日本陸上競技連盟は「日本にノンバイナリー枠を設けている大会があるとの情報は得ていない」としている。 10日の区議会で、性的少数者(LGBTQなど)に関する課題に取り組んでいる上川あや区議が、男女のどちらでもない枠の創設を求めたのに対し、区の担当者は「多様性の尊重と、共生社会の実現を目指す区として、対応す
京の学生たちに愛された「出町のおっちゃん」が、再び厨房(ちゅうぼう)に立つ。京都市上京区にあった「餃子の王将」出町店で、食べるに事欠く学生たちを励まし続け、2020年10月に引退した井上定博さん(73)。新型コロナウイルス禍や物価の高騰で孤独や困窮に苦しむ人が増える中、「この年齢でようやるなと言われるけどな、家でのんびりしてる場合やないと思うねん」と、近くでギョーザの店を新たに開く。 かつて「飯代のない人は、食後の皿洗いでお腹(なか)いっぱい食べさせます」と張り出してあった店舗跡から約100メートル。地元の買い物客でにぎわう出町桝形(ますがた)商店街の一角に17日、「いのうえの餃子」と大書した看板が掲げられた。
それは、突然の通告だった。閑静な住宅街の駅前通りにあるイチョウ並木(計20本)の幹にテープで留められた1枚の白い紙。「この木は撤去を予定しています」と記されていた。予定はわずか2週間後。張り紙で初めて伐採を知らされた住民女性(34)は「なんで急に……」と困惑するばかりだった。 イチョウ並木は、女性が暮らすマンション(大阪市東住吉区)近くにある。秋になると鮮やかな黄色に染まり、毎年楽しみにしていた。撤去を予告してきたのは、木を管理する市だ。電柱や電線、道路標識の妨げになることが理由という。だが、女性の目にはそれほど邪魔には見えない。市に撤回を求めたものの、年の瀬にイチョウは根元から切り倒された。 市が街路樹の撤去を始めたのは2022年夏から。さらに大阪城公園など各地の公園樹を含めて計約1万本を24年度にかけて撤去するとしている。だが、これに住民が反発。地域政党「大阪維新の会」の市長の下で進む
政府が推奨するマスクの着用ルールが緩和される。新型コロナウイルス感染拡大前の「マスクなし」が当たり前になるのはいつか。公衆衛生の観点とは別の要因もあり、すぐにコロナ禍前の風景には戻らないとの見立てがある。【安藤龍朗】 強かった同調圧力 「大半の人たちがマスクを外すようになるのは、5月の大型連休ごろではないでしょうか」。桜美林大学の山口創教授(健康心理学)は、そう予想する。政府のマスク着用ルールは3月13日に緩和されるが、「脱マスク」が広がるには、少し時間がかかるとみる。 感染が拡大した2020年、マスクの着用は瞬く間に日本社会に浸透した。「それから3年も着けていますからね。周囲の行動を見て自分の選択を決める、いわゆる同調圧力が日本社会はとても強いと実感しました」
新型コロナワクチンのコールセンター業務を巡り、委託先でオペレーターの水増し報告があったことを説明する大阪府吹田市の職員=吹田市役所で2月10日、三角真理撮影 新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、大阪府枚方市など3市からコールセンター業務を受託していた人材派遣会社「パソナ」(東京都)は10日、再委託先の企業がオペレーターの人数が足りないのに虚偽報告し、委託料計約10億8000万円分を過大請求していたと発表した。 市民からは「電話がつながりにくい」などの苦情が寄せられており、パソナは「管理不行き届きにより、市民の皆様に多大なご迷惑をおかけした」と謝罪。3市に返還した上で、再委託先の「エテル」(大阪市)に損害賠償を求めるとしている。 業務を委託していたのは枚方市、同府吹田市、兵庫県西宮市。パソナによると、必要なオペレーター数を3市と定期的に確認し、エテルに再委託していた。
顔にアカミミガメを模したペイントを施し、新たな外来種規制について説明する環境省の奥田直久・自然環境局長=環境省の公式ユーチューブチャンネルから 環境省の公式ユーチューブチャンネルに、顔を緑、耳などを赤くペイントした省幹部が登場する動画がある。本人は「恥ずかしいという思いもあった」と話すが、そうまでして画面に出たのは「新たな外来種規制をより多くの人に知ってもらわなければ」という思いからだった。 「ミドリガメ」ペイントで新規制を解説 「法律がどう変わったか、解説してくれるのがこちらの局長」。司会役の環境系ユーチューバー、WoWキツネザルさんの紹介を受けて登場したのは、同省で外来種規制を担当する部局のトップ、奥田直久・環境省自然環境局長(60)だ。 顔や耳のペイントは「アカミミガメ(ミドリガメ)」を模したもの。WoWキツネザルさんが本物に似せて、しま模様も丁寧に描き込み、30分ほどかけて仕上げた
まさかの具なしカップ麺? 明星食品が2022年9月に発売した低価格のカップ麺が静かな人気を呼んでいる。業界的にもこうした商品は異例だが、開発の背景には最近の物価高があるという。安さが魅力とはいえ、各社がしのぎを削る中で麺とつゆだけではあまりにシンプルでは? そんな疑問を抱きながら、人気の理由を探った。【増田博樹】 実売100円前後 安さが魅力 そのカップ麺は、「明星 すうどんでっせ」▽「同 かけそばでっせ」▽「同 かけラーでっせ 醬油(しょうゆ)ラーメン」。希望小売価格は118円(税抜き)で、大手スーパーのプライベートブランド(PB)や安売り商品並みだ。ドラッグストアやディスカウントストアなどで税込み100円前後で売られている。 麺とつゆだけなのが商品の特徴。商品を企画した明星食品マーケティング部次長の根橋弘樹さんは、「袋入りの麺とは違って、カップ麺で具材のない商品は業界全体でもあまりない
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