第3回 いつもの食事に「1品」プラス、市販の総菜も上手に活用 2023/1/27 田村知子=ライター 本特集では、日本人を対象とした疫学研究で明らかになってきた、日々の食事と脳の老化との関連について解説してきた。高齢になっても認知機能や脳の容積が維持されている人は、いろいろな食品を食べていることが報告され、「食事の多様性」が脳の老化を防ぐカギとなることが分かってきている。今回は、多様性の低い食事・高い食事の具体例とともに、脳の健康を守るための食事のとり方を紹介していく。
認知症予防のためには、何をどのように食べていけばいいのか? 本特集の第1回では、 人の精神活動を司る脳と日々の食事には密接な関わりがあることを紹介した。脳の主なエネルギー源となるブドウ糖のほかにも、脳の代謝や情報の伝達には、ビタミンB群や葉酸、カルシウム、亜鉛などが働き、脳の構造や神経伝達物質の材料には、脂肪酸やアミノ酸が使われている。こうした栄養素の多くは、日々の食事から摂取されて体内で代謝され、血液などを介して脳に供給されている。 脳を乾燥させると、その重量の50~60%は脂質でできていて、細胞膜には特にドコサヘキサエン酸(DHA)やアラキドン酸といった多価不飽和脂肪酸が多く含まれていることも分かっている。さらに、食べたものを消化・吸収する腸と脳には、相互に作用し合う「腸脳相関」があり、食事による腸内細菌の変化が認知機能に影響する可能性も示唆されている。 では、認知機能を維持し、認知症
成長・発育過程にある子どもが菜食主義で栄養素を十分摂取可能かという疑問を、システマティックレビューで検討した結果が報告された。論文の著者らは、これまでのこの領域の研究では「菜食主義」の定義が統一されておらず、信頼のおけるエビデンスはほとんど存在していないと述べている。 菜食主義はエビデンスのないまま実践者が増加している 菜食主義の人気が長年にわたって徐々に高まってきている。例えば米国の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey;NHANES)では、一般人口の2.3%が菜食主義であると報告されている。英国では過去半世紀にわたり劇的な増加かみられ、1940年代には人口の0.2%であったものが、2000年には3~7%になったと推計されている。 成人が菜食主義であるということは、同居する子どももその影響を受けている可能性が高い
ツイッター(Twitter)の農林水産省公式アカウントが、添加物を危険視する投稿をしたと批判され8月12日、投稿を削除しました。投稿の元になった農水省広報誌aff(あふ)2022年8月号の記事も同日、4カ所にわたって修正が加えられました。 朝日新聞が「添加物を危険視?農水省のツイートや広報誌記事、指摘受け修正・削除」と報じ、yahooニュースとしても流れたのですが、記事には1000件以上のコメントが付いており賛否両論。「誤ったメッセージを流した」などと農水省に反省を促す人たちがいる一方で、「添加物は危ないのに……」「業界の圧力に屈して削除したなら、食品行政への信頼をむしろ損なう」など、削除修正を批判する人たちも少なくありません。 この話、どう考えるべきか? 私は、農水省の深刻な課題があらわになった、と思うのですが、話がけっこう複雑なので、多くの人がどうも表層的にしか理解していないようです。
全身の細胞で日々起こっている“細胞の若返り”を担う「オートファジー」は、老化や生活習慣病、加齢に伴う病気などに密接に関わる。オートファジーの研究を行う大阪大学栄誉教授の吉森保氏は、「オートファジーの活性化によって健康寿命を延ばせる可能性がある」と話す。現在、世界中で飛躍的に進んでいるオートファジー研究だが、ヒトで確認されていることはまだ少ない。しかし、日常生活でオートファジー活性化につながる可能性があるヒントはいくつかある。第3回では、私たちの体に備わるオートファジー機能をなるべく落とさず維持していくために、今日からできる「5つのこと」を聞いていこう。
編集部 免疫力を高める食事についての質問です。前編ではバランスが大事とうかがいましたが、具体的に免疫と関係する栄養成分などについてどれくらい分かっているのでしょうか。 國澤 はい。われわれの研究では、ビタミンB1が不足すると胸腺などの免疫組織が小さくなることを確認しています(*1)。ビタミンB1は豚肉や大豆、玄米などに多く含まれていますね。マウスをビタミンB1不足のエサで飼育すると、3週間ほどで胸腺の大きさが10分の1くらいになってしまいました。そう考えると、たった1種類の栄養素が短期間不足するだけでも免疫はボロボロになるのだと想像がつきます。 ほかにもビタミンAや葉酸(ビタミンB9)の不足も免疫に影響すると考えられています。ビタミンAは「腸の免疫を維持するのに大事」と言われるのをご存じですか? 免疫細胞は、教育を受けた部位に戻ってきやすい性質を持っています。腸で教育を受けた免疫細胞は、腸
1日3~4杯のコーヒーを継続的にとることは日本人のさまざまな疾患リスク抑制に効果的、という研究が相次いで報告されている。その有効成分とされるのがコーヒーの2大成分「コーヒーポリフェノール」と「カフェイン」だ。今回は、認知症の最新エビデンス、コーヒーに含まれるカフェインを生活に取り入れるポイントについて聞く。 コーヒー、緑茶など幅広い飲料や食品に含まれるカフェイン 寝起きでぼんやりする…というときにもコーヒーを飲んでしばらくすると気分がシャキッとする。これはコーヒーに含まれるカフェインの働きによるものだ。 「強い苦みを持つカフェインは、じつは植物が昆虫に打ち勝つための防御物質なのです。コーヒーをはじめ、お茶、ココア、コーラ飲料、滋養強壮ドリンクやエナジードリンク、さらにチョコレートにも含まれています。覚醒作用を持ち、倦怠感の抑制、片頭痛の緩和などの用途で、風邪薬などにも配合されています」と、
冒険病理学者・家森幸男さんに聞く、健康長寿を実現する食事(第2回) 2022/3/23 柳本操=ライター 予防栄養学のプロフェッショナルで、“冒険”病理学者としても知られる、京都大学名誉教授の家森幸男さんは、世界25カ国61地域を巡り、地域に根付いた食事と健康に関するエビデンスを明らかにしてきた。世界で集めた調査結果をもとに現在も「健康長寿を維持する長寿食」をテーマに研究を続ける家森さんは、「日本人は大豆と魚から多大な恩恵を受けている」と話す。後編では、大規模調査で明らかになった大豆・魚と心筋梗塞との関係、また、日本食とともに長寿食として知られる地中海食と日本食との共通点についても聞いていく。
若々しい体の維持に不可欠な「筋肉」。しかし、年齢とともに筋肉量は減っていく。さらに、コロナ禍によって運動不足が続くと、筋肉減少は加速していく。「筋肉減少に歯止めをかけるには、筋肉の材料となる朝のたんぱく質摂取から見直す必要があります」と、立命館大学スポーツ健康科学部の藤田聡教授は言う。朝に取るたんぱく質がなぜ重要なのか、手軽に取れるたんぱく源は何かを紹介しよう。(前編はこちら) 筋肉は20~30代をピークに減りはじめるが、最近のコロナ禍による活動量の低下もあり、筋肉減少には拍車がかかるという。筋肉維持には、やはりたんぱく質が必要。(c)fotomircea-123RF 朝食でたんぱく質が不足していると筋肉量が減る 「最近、階段を上るのがきつくて、ついエスカレーターを選んでしまう」という人は、筋肉量が減っているかも? 「筋肉は20~30代をピークに減りはじめます。40歳からは10年ごとに約8
批判も覚悟のうえで自ら情報提供 山崎製パン株式会社(ヤマザキ)が3月、一部の角食パンに食品添加物「臭素酸カリウム」を使い始めました。臭素酸カリウムは遺伝毒性発がん物質とされ、添加物批判の記事や書籍等では必ず、猛批判される物質。同社は、臭素酸カリウムを2014年以降は使っていませんでしたが、使用再開です。 しかも、2月25日からはウェブサイトで、自主的に使用再開を情報提供し始めました。法的には、告知する義務はないのに……。 さっそく同社に尋ねました。「発がん物質を食品に使う? 週刊誌などからまた、猛烈にたたかれますよ」。答えは、「もっとおいしいパンを提供するために使いますが、安全は絶対に守ります。詳しく説明しますので、なんでも聞いてください」。 さっそく取材しました。添加物はイヤ、と思う皆さんにこそ読んでもらいたい、科学的根拠に基づく企業の毅然とした判断が、ここにはあります。 食感改善に絶大
科学的には、グルタミン酸ナトリウムを常識的に食べる量であれば安全とされています(食品安全委員会の資料「食べ物の基礎知識」参照)。 味覚障害を引き起こすとの説も、後述しますが根拠はあやふや。あり得ない、という見方が科学者の大勢です。なのに、消費者の中には嫌う人が多い。その現象は世界で見られ、アメリカでもno-MSGとパッケージに大きく書いた食品が売られています。どうして誤解されているのでしょうか? 味の素社がこの問題と正面から向き合い、世界へ正しい情報発信をしようと9月20、21日、ニューヨーク・マンハッタンのホテルでフォーラムを開きました。 シェフや栄養士、メディア関係者、それに世界各国の味の素現地法人から社員や協力者、オピニオンリーダーなど約200人が集まり、講演やパネルディスカッションが行われました。 日本企業が海外で開くこの手のイベントは、日本国内で「海外で開催しました」と言って箔を
どんなコラム? 職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります プロフィール 京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動 福島県産米の全量全袋検査を今後どうするのか? 県と食生活ジャーナリストの会、FOOCOMの合同で9月29日夜、意見交換会を開いた。ジャーナリストや企業関係者、生協関係者など50人あまりが参加した。 このテーマについて、FOOCOM.NETでは、県の担当課長のインタビュー等を通じて読者に情報を伝えてきた。 ・なぜ、放射性セシウムは米から検出されないのか?~福島県課長にインタビュー (前編) ・全量全袋検査に年間60億円を費やす意味は~福島県課長にインタビュー(後編) 大胆に整理してしまえば、この問題は次の3項目に集約されるように
放射性セシウムの暫定規制値を超える牛肉が全国で確認され、国民の不安が高まっている。その3カ月前に、生肉料理を食べた幼児を含む4人が亡くなった腸管出血性大腸菌による食中毒事件も重なり、食肉全体への不信感は一層深刻化している。とはいえ、実際のリスクに伴って被り得る被害とは別に、リスクの実態のない“風評被害”がはびこっているのも事実。 食品添加物に対する風評被害もかまびすしい。「食品添加物を摂ると健康を害するのではないか」という巷の噂も科学的根拠はなく、いわゆる風評だ。食品添加物への誤解を正すべく、経済学者の有路昌彦氏がこのほど、『無添加はかえって危ない』を著した。安心するためには、食品添加物について正しく理解すること。間違った情報に惑わされて、不安に陥らないためのノウハウを聞いた。 (聞き手は日経BPコンサルティング・プロデューサー中野栄子) 問:今や、食品スーパーに行けば、「無添加食品」があ
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