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ブックマーク / aasj.jp (43)

  • 10月7日 ヒト卵子の減数分裂異常(9月27日号Science掲載論文) | AASJホームページ

    2回の分裂を繰り返す間に片方の染色体だけを持つ配偶子を形成する減数分裂は真核生物に共通の過程だが、この過程は極めて多様で、哺乳動物の場合オスとメスで大きく異なっている。精子形成では生後精母細胞が2回連続して分裂する過程で4個の配偶子が作られるが、卵子の場合はもっと複雑だ。発生期に1回目の分裂が始まっているが、途中で止まり、生後排卵可能になると分裂が完成するが、片方の染色体は極体にしまいこまれて配偶子になれない。この過程で卵子は排卵されるが、その後第二減数分裂は途中で停止した後受精により完成するようになっている。この複雑な過程がうまくいかないと染色体の数の異常(Aneuploidy)が起こり受精しても発生しない。 今日紹介するコペンハーゲン大学からの論文はこのようなAneuploidyの発生が人間の妊娠可能期間を決めていることを示した研究で9月27日号のScienceに掲載された。タイトルは

  • プラトン「テアイテトス」(生命科学の目で読む哲学書 第4回) | AASJホームページ

    図1 プラトン著「テアイテトス」は光文社と岩波書店から出版されている。この機会に、両方を読んでみた。 これまで、フロイトの「モーセと一神教」を題材に普遍宗教の誕生、そして柄谷行人の「哲学の起源」を題材に、ユダヤ教誕生、およびほぼ同じ時期に起こったイオニア哲学誕生について見てきた。この2回で、哲学の誕生と普遍一神教の誕生の背景に見られる共通性や、両者の差異についてわかっていただいたのではないだろうか。またこの2回を通して、これから私が目指している長い道のりについても理解していただけたのではないだろうか。 さて、イオニアでの哲学誕生の次は、プラトンやアリストテレスに代表される、いわゆるギリシャ哲学の主流が続くことになる。この二人は、ギリシャ哲学にとどまらず、ローマ時代から近世まで、ヨーロッパの哲学にとっては最も影響力のある思想家として位置づけられてきた。当然私にとっても、生命科学の観点から見た

  • 1月30日 アルツハイマー病は歯周病菌が原因?(1月23日号Science Advances掲載論文) | AASJホームページ

    AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 1月30日 アルツハイマー病は歯周病菌が原因?(1月23日号Science Advances掲載論文) 昨日に続いてアルツハイマー病(AD)の治療についての論文を紹介する。昨日も、ADはさまざまな角度から研究が進んでおり、意外な標的が見つかる可能性が高いと述べたが、今日紹介するCortexymeと呼ばれる創薬ベンチャーからの論文は、意外性が大きすぎる論文だ。もし示された結果が確認され、仮説が正しいとすると、この分野がひっくり返ると行ってもいい話で、Science Advancesではなく、Scienceが掲載したはずだ。すなわち、AD病の原因が歯周病菌という大胆な結論が提出された論文だ。タイトルは「Porphyromonas gingivalis in Alzheimer’s disease brains: Evidence for

  • 11月28日 生きたマウスのファイブロブラスト長期観察(11月29日号Cell掲載論文) | AASJホームページ

    「何事も目で見ないとわからない」ことはよくわかっていても、私たちは多くのことを見ないですましてしまう。多くの場合見るのが難しいからで、生物学的プロセスを見るためにはそれを可能にするテクノロジーが必要だ。例えば、神経の興奮を何週間も見続けようとすると、興奮時のカルシウム流入を光に変えて、しかも嚢の中を何日も覗き続けるテクノロジーが必要になる。方法がない場合は、断片を創造力で組み合わせて結論せざるをえないが、これがしばしば間違いの元になる。 今日紹介するエール大学からの論文は皮下に存在するファイブロブラストを、皮膚を傷つける事なく観察する方法を開発しファイブロブラストの動態を何ヶ月も追いかけた研究で11月29日号のCellに掲載されている。タイトルは「Positional Stability and Membrane Occupancy Define Skin Fibroblast Homeos

  • 11月3日:脊髄損傷の大きなステップ:生理学の勝利(Natureオンライン掲載論文) | AASJホームページ

    9月26日、脊髄損傷の小さなステップというタイトルで、硬膜外電気刺激とリハビリを繰り返すことで、硬膜外の電気刺激を自分の脳である程度コントロールすることで、大地を歩けるようになった症例報告を紹介した。ただ、論文を読んで、例えば体性感覚が欠損している分を目で補っているなど、どんな患者さんでも確実に歩けるようにできるのかについては説得力がなかったため、「脊髄損傷の小さなステップ」というタイトルで紹介した。 ところが、まだ一月しか経っていないのに、今度はNatureに同じく外科手術で脊髄の硬膜外に留置した硬膜外刺激装置で3人の慢性期の頸椎脊髄損傷患者さんが自力で歩行することを可能にした研究が報告された。膨大な生理学的データを示して、なぜ歩けるかというプロセスを段階的に説明した論文で、素人の私にも説得力が高く、これはかなりいけると、今度は「脊髄損傷の大きなステップ」というタイトルで紹介することにし

  • 10月31日 時間をカウントする脳回路(Nature Neuroscienceオンライン掲載論文) | AASJホームページ

    私たちの海馬の嗅内野と呼ばれる領域に、場所を記憶するグリッド細胞が存在する事はノーベル賞に輝いたオキーフやモザーさんの研究によって明らかにされた。実際、外部の空間的位置に対応して反応する細胞が、脳内で一種の空間的地図を形成しているのをみると、当に感動する。一方、空間と並んで重要な時間はどのようにカウントしているのか?これについては、9月1日に同じモザーさんの研究室から、マウスが10−20秒間隔で規則正しく興奮を繰り返して、行動に時間の情報を統合している神経回路が示された。ただ、この時間は行動と密接に関わり形成されるリズムのようなものだ。しかしこれ以外にも、私たち人間はじっとしていても、頭の中で時間の経過を感じることができる。 同じようなじっとしている時の時間をマウスはカウントすることができるのか、もしできるとしたらその回路はどんな特性を持っているのかを研究した論文がNorthwester

  • 10月15日 収穫期に入った英国バイオバンク I 、構築と維持(10月11日号Nature 掲載論文) | AASJホームページ

    AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 10月15日 収穫期に入った英国バイオバンク I 、構築と維持(10月11日号Nature 掲載論文) 先週号のNatureにUKバイオバンクと銘打った論文が2編発表されていたので、今日と明日で紹介する。完全にオープンアクセスになっているので、実際の論文に是非アクセスしながら読んで欲しいと思う。 最初はオックスフォード大学が中心になっているが、様々な国が参加してまとめた論文でUKバイオバンクとは何かについて詳しく書いている。タイトルは「The UK Biobank resource with deep phenotyping and genomic data(詳し形質解析とゲノムデータが集まったUKバイオバンク)」だ。 21世紀人間学の最大のテーマは、個々の人間の情報をゲノム情報と統合して、個人や社会を理解することだが、そのためには

  • 9月19日 医療の対象としての老化(9月17日米国医師会雑誌掲載に掲載された3編の意見論文) | AASJホームページ

    米国では何が医療の対象かを新しく決めていくため、常に医療界の意見の集約が図られている。勿論一般的な病気ではそんな必要は無いが、実際に病気と健康状態の境界にあるような病気の場合は、一般の人や保険会社を説得するための様々な広報努力が行われる。この中で医療の対象としてのメタボリックシンドロームや慢性炎症といった概念が出来上がっていったように思う。 そして今最も重視されているのが、老化を医療の対象として認め、介入するかどうかで、この方向での合意に向けた意見調整が現在行われていることを伺わせる3編の意見論文が、米国医師会雑誌に掲載されたので紹介する。掲載されている順番は無視して、全体像がわかりやすいように私の方で順番を勝手に調整して紹介する。 最初の論文は疫学、医療統計の専門家Olshanskyの視点で、タイトルは「From Lifespan to Healthspan(寿命から健康寿命)」だ。 著

  • 9月6日 炭水化物摂取量と死亡率(The Lancetオンライン版掲載論文) | AASJホームページ

    私たちの学生時代は、ドンブリ飯といって、何は無くとも米がエネルギーの元だった。今と比べると、タンパク質や脂肪の摂取量はかなり低かったと思う。実際、我が国のコホート研究の多くは、米中心の炭水化物依存性が早死にの元だとされていた。 その後、我が国も豊かになり、誰もがローカーボなどと炭水化物制限が健康の維持につながると信じるようになった。しかし当かどうか、実際には20年を超える追跡調査が必要だ。今日紹介するハーバード大学からの論文は15000人に及ぶ45−64歳の人を25年も追求して炭水化物の量と死亡率を調べた研究でThe Lancetオンライン版に掲載された。タイトルは「Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis (事での炭水化物の摂取量と死亡率:前向きコホ

  • 8月29日:眼球内に遺伝子導入して視細胞を復活させる(8月23日号Nature掲載論文) | AASJホームページ

    山中iPSが発表される前から、細胞の系統をリプログラムできるという論文は数多く発表されていた。山中iPSにより、転写因子のセットを導入することで実際にエピジェネティックな状態がリプログラムできることが明らかになり、多能性の幹細胞を経ないで直接細胞の系列を変化させるdirect reprogrammingの研究は盛んになった。ただ私が把握している限りで、iPSを越えて臨床応用が見えている方法の開発にはまだまだ時間がかかるように思う。 今日紹介するマウントサイナイ医学校からの論文は、分化のリプログラムの代わりに、抑制されている分化プログラムをもう一度再活性する方法を開発して網膜内にロドプシンを発現する桿細胞を復活させ、視力を回復させようとする、リプログラムというよりプログラムを誘導する研究で、4月23日号のNatureに掲載された。タイトルは「Restoration of vision aft

  • 7月31日:組織中で遺伝子配列を読んで、各細胞で発現しているRNAを正確に定量する(7月27日号Science掲載論文) | AASJホームページ

    AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 7月31日:組織中で遺伝子配列を読んで、各細胞で発現しているRNAを正確に定量する(7月27日号Science掲載論文) この人の頭の中はどうなっているのかただただ驚く天才がどの分野にもいる。これらの人に共通するのは、明確な目的とゴールを定め、そのためにアッと言わせる技術的イノベーションを重ねていく点だ。私が読む論文の範囲でいうと、スタンフォード大学のKarl Deisserothはその一人だろう。光遺伝学を始め彼のグループから発表された新しい技術は、いつもアッといわせる、脳を見る、測るという一点に絞って、いつも新しい技術的可能性を開拓しているように思う。 毎回、こんな事までやっているのかと思わす彼のグループからScienceに発表された今日紹介する論文を読んで、「まさかこんなことまでチャレンジしているとは予想もつかない』と当に驚

  • 6月6日 統合失調症発症に関わる主役の細胞(5月21日号Nature Genetics掲載論文) | AASJホームページ

    一人の人間には多くの情報が集まっている。ゲノムは言うに及ばず、エピゲノム、神経ネットワーク、そして言語、文字、さらにはバーチャルメディア等、様々な媒体により記録された情報が集まっている。勿論生命進化の過程で開発された情報媒体は他にもあると思うが、記録として残せる媒体はそう多くない。そして重要なことは、異なる媒体に記録されていても、内容は同じ事もある(例えば飢えの経験がエピゲノム、脳ネットワーク、言語により記録されること)。そしてこれは一人の個人に集まることで初めて統合される。 最近講義する機会があれば、21世紀の生命科学の重要な課題は、一つの個体に表現された、様々な媒体により担われた情報同士を統合する方法の開発だと教えている。この考えでいくと、発生学ではゲノムとエピゲノムの統合することが課題になる。幸いエピゲノムはDNA媒体と密着しており、ゲノムの解読なしにエピゲノムの解読がありえない関係

    pseudomeme
    pseudomeme 2018/06/08
    微妙な4種類だ
  • 5月26日 最近の自閉症研究まとめ(5月22日号JAMA Psychiatry掲載総説) | AASJホームページ

    今日、明日と自閉症についての総説や論文を紹介したい。最初はJAMA Psychiatryに掲載された総説で、自閉症研究の現状をコンパクトにまとめている。コロンビア大学、NY自閉症研究センター、やエール大学の専門家が書いている。タイトルは「The emerging clinical neuroscience of autism spectrum disorder (新しく現れてきた自閉症スペクトラムの臨床神経科学)」だ。 現役を退いてすでに5年を超えたが、分野を問わず論文を読んでいて実感するのが、自閉症スペクトラム(ASD)についての研究の進展だ。私が門外漢であるためより興味を惹かれることもあるが、多くのテクノロジーが集められて研究が進んでいるアクティブな領域であることは間違いない。ただ、実際の治療に携わる医師や心理士、教育者は、なかなか最新の研究をフォローするだけの余裕がないと思う。そんな

  • 5月15日:亀の温度依存性の性決定メカニズム(5月11日Scienceオンライン掲載論文) | AASJホームページ

    地球温暖化で種の絶滅の危機に最もさらされている種が爬虫類だ。亀、ワニ、トカゲなどの一部の種は、性が卵が孵化するときの温度で決定される。この温度による性決定を行う種がどれぐらい存在するかについては、私が顧問として勤務している生命誌研究館の季刊誌、「生命誌」24号に詳しく書かれているのでぜひ参考にしてほしい(https://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/024/ss_1.html#2)。この記事では、少なくともカメ類で47種、全てのワニ類(8種)、そしてトカゲの17種が温度に性が決定されることが紹介されている。もし地球の寒冷化や温暖化が進み、発生時の温度が特定の閾値を越えると性比が大きく変化し、場合によってはオスあるいはメスが生まれなくなり、種の維持が不可能になる可能性すらある。ワニについては全てのワニが絶滅する危険性すら存在する。ただ問題は対策を打とうにも、

  • 3月28日:iPSを冬眠させる:着想に脱帽(Cellオンライン版掲載論文) | AASJホームページ

    iPSのパワーは、モデルとして広く用いられている実験動物でなくても、多能性の幹細胞を樹立できれば、細胞レベルの研究を繰り返し行える点だ。私が研究総括を務めていたJSTの先駆け研究「iPS細胞と生命機能」でも、たとえば多さんのように、希少動物であるアマミトゲネズミの生殖細胞分化を研究する目的でiPSの樹立にチャレンジしていた研究員がおり、研究の進展を楽しみにしていた。 このように、モデル実験動物以外の研究が可能になることはよくわかっていたが、今日紹介する冬眠を可能にする細胞メカニズムをiPSを樹立して解明しようとした米国NIHからの論文を読んで、その着想の豊かさに意表を突かれた。タイトルは「iPSCs from hibernator provides a platform for studying cold adaptation and its potential medical appl

  • 11月27日:うつ病は脳血管の障害?(Nature Neuroscience掲載論文) | AASJホームページ

    分子メカニズムをたどって行くと、新しい組織発生の中には外界のストレス反応と共通の分子を使っている過程が多いことがわかる。例えば、毛の発生にはEDDAと呼ばれる炎症性サイトカインTNFファミリー分子が関わり、その結果ICAM等の接着因子が誘導される。同じように哺乳動物で進化したリンパ節やパイエル板、乳腺などもそうだ。もちろん、多くの病気も最近では炎症との関わりで考えられるようになっており、動脈硬化は言うに及ばず、糖尿病でのインシュリン抵抗性も慢性炎症として捉えるようになっている。 今日紹介するニューヨーク・マウントサイナイ医大からの論文は社会ストレスで誘導されるうつ病も血管の透過性が上昇することで始まる炎症に起因する可能性を示した研究で11月号のNature Neuroscienceに掲載された。タイトルは「Social stress induces neurovascular pathol

  • 9月19日:コカインで変化する神経サーキットを明らかにする(Natureオンライン版掲載論文) | AASJホームページ

    コカインなどの薬剤により神経サーキットが構造的に組変わり、様々な症状の原因になることがわかっている。ただ、実際にコカイン使用時に起こる回路の変化を特定するのは簡単でない。脳を刺激してすぐ反応している細胞をFosなどの転写で特定する方法もあるが、どの神経とどの神経が結合しているのかを明らかにするには、候補のあたりをつけ、それに絞って研究する必要がある。うまくいけば論文になるし、全く無関係だと無駄骨に終わる。 今日紹介するスタンフォード大学からの論文は特定のニューロンと結合する回路のコカインによる変化を網羅的に調べる方法を開発した研究で、Natureオンライン版に掲載された。タイトルは「Rabies screen reveals GPe control of cocaine-triggered plasticity(狂犬病ウイルスによる脳回路スクリーニングによりコカインによって誘導される神経回

  • 9月7日:もし「のっぺらぼう」に育てられたら?(Nature Neuroscienceオンライン版掲載論文) | AASJホームページ

    AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 9月7日:もし「のっぺらぼう」に育てられたら?(Nature Neuroscienceオンライン版掲載論文) 言語能力が生まれつき備わっているのか、あるいは学習によって初めて得るものなのかは現在も議論が続いて決着がつかない。しかし個人的にはどちらかと決めるのは難しいように思う。というのも、言語のような高次機能が成立するために学習が必要だとしても、それを可能にするそれ相当の生まれついての能力(脳構造)が必要になり、結局先天的な過程と後天的な過程を完全に分けることができない。 同じ問題は、顔認識にも言えるようだ。すなわち、様々な顔を認識できるのは、私たちが能として顔を見るように生まれついているからと考えることもできるし、コンピュータのディープラーニングのように、学習しているうちに顔というカテゴリーを脳内に成立させるとも考えることができ

  • 9月2日:トランスポゾンは卵割期のクロマチン構造のオーガナイザー(Nature Geneticsオンライン版掲載論文) | AASJホームページ

    AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 9月2日:トランスポゾンは卵割期のクロマチン構造のオーガナイザー(Nature Geneticsオンライン版掲載論文) 私たちのゲノムのほぼ半分はそれ自身で機能を持たず、しかもその数を増大させる可能性を持つトランスポゾンに占められている(生命誌研究館ブログ参照)。ほとんどはゲノムに入り込むとすぐにメチル化され転写が起こらないように調節されている。しかし、クロマチン構造が大きく変化する受精後の初期発生では、クロマチンが緩んでトランスポゾンが転写されることが知られていた。ただ、これは発生初期の一種の副作用として考えられ、トランスポゾンの転写が初期発生に重要な働きをするとは考えられてこなかった。 ところが今日紹介するドイツミュンヘンのヘルムホルツセンターからの論文はLine-1と呼ばれるトランスポゾンの転写が発生初期のクロマチン調節のオー

  • 8月28日:アンチ・クリスパーの作用機構(9月7日号発行予定Cell掲載論文) | AASJホームページ

    我が国では倫理議論だけが先行しているCRISPRだが、生物学としてもますます深化が進んでいる。この中心になっているのが、この技術の創始者の一人カリフォルニア大学バークレイ校のDoudnaさんで、実際この研究室から出てくる論文は、応用を競っている世の中とは少し違って、CRISPR/Cas自体の生物学を深めながら新しい技術可能性を示す、高みから世間を眺めているようなスタイルだ。 CRISPR.Casはウイルスに対する防御として細菌、古細菌を問わず分布しているが、標的になったウイルスの方でも当然防御システムを開発する。これが抗CRISPR(Acr)で、よく知られているのが細菌のメカニズムをそっくり拝借して、細菌がコードするクリスパーを壊してしまう方法だ。ただ、この方法は新しいメカニズムではないため、新しい技術につながらない。これ以外にこの防御をかいくぐる方法としては、Cas9のDNA分解活性を抑