この3人をまとめ、任天堂を繁栄に導いた経営者は、花札メーカー創業者のひ孫で3代目社長を勤めた山内溥だ。今や世界的に有名になった宮本が「社長の喜ぶ顔が見たくてみんな一生懸命やった」と回想するほど、カリスマ性のあるワンマン社長だった。山内は隠れた才能を持つ人材を見抜き、全面的にバックアップしたため、世界的な経営者の一員に加わることができた。 任天堂はものすごい発明をしたわけではない。技術もなかった。ブームが過ぎた小型液晶をゲーム機に取り付け、誰でも暇つぶし程度にできる単純なキャラクターのゲームを作っただけだ。ゲーム機の技術力・ソフトウエア・キャラクターの緻密(ちみつ)さ、どれ一つ取ってもライバルのソニーに負けていた。しかし市場を制したのは任天堂だった。 「枯れた技術の水平思考」。これこそ、サラリーマン横井が語った成功の秘訣だ。ゲーム機に液晶を付けるなど、誰もが知っているありふれた技術を、誰