青春のすべてを甲子園という夢の舞台にかける球児たち。勝負である以上、どんなプレーにも判定が伴う。大舞台だからこそ、ではなく甲子園に縁のない高校同士の練習試合も、日本中が注目する場面でも、普遍のジャッジがあってこそ高校野球は成り立つ。1998年夏の甲子園大会2回戦。豊田大谷と宇部商は延長十五回、史上初のサヨナラボークによる豊田大谷の勝利という幕切れとなった。主審を務めた林清一氏(59)に試合を振り返りつつ、高校野球の審判哲学を語っていただいた。 【写真】豊田大谷対宇部商戦の延長15回、無死満塁から宇部商藤田のボークでサヨナラ勝ちし、喜ぶ豊田大谷=98年8月16日、甲子園 100年の歴史で今のところ唯一のジャッジは、異様な雰囲気の中、“究極の当然”を求めた結果の産物でもあった。 人によるかもしれない。ただ、林氏は「下調べをしない」をモットーに、ゲームに臨んでいた。 「コントロールがいいと