写図表あり csij-journal 010 tsuchiya.pdf エンハンスメント論と先端生命科学の現在・近未来 ―欧米圏におけるエンハンスメント論争の構図― 土屋敦 (東京大学大学院博士課程、北里大学臨床遺伝医学教室研究員) ■はじめに 近年―ここ10年前後の間に―特に欧米圏で遺伝学やナノテクノロジー・脳神経科学などの先端生命科学技術の近未来的な利用をめぐってエンハンスメント論争が盛んに行われています。 エンハンスメント(Human Enhancement)は、先端生命科学技術を、治療目的を超えて、「より望ましい子ども、優れたパフォーマンス、不死の身体、幸せな魂といったものに対する深くてなじみある人間的欲望を満たす」ために用いること(Presidential Council 2004=2005)であり、また、「健康の回復と維持という目的を超えて、能力や性質の「改善」を目指して人間の