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今月の「かわいい」
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奈良公園(奈良市)に生息する野生のシカが、新型コロナウイルス禍を経て耳と頭を下げる「おじぎ行動」を取らなくなっていることが、奈良女子大学などの研究グループの調べで分かった。観光客が激減すると奈良公園に出没するシカの頭数も減った。住宅街のカラスは生ゴミをあさるなど、生き物と人間の暮らしには密接な関係があることは知られていたが、人間活動が減ったことによる生き物への影響を調査した報告は珍しいという。 おじぎは「鹿せんべい」のためか 奈良女子大学研究院自然科学系生物科学領域の遊佐陽一教授(動物生態学)によると、野生のシカには元々、攻撃の前にストレスを感じると頭を下げる「おじぎ行動」が見られる。しかし、奈良公園周辺に生息するシカは観光客を見つけると「鹿せんべい」を求めて近寄り、おじぎ行動をとるという。同じようにシカとふれあえる観光地、宮島(広島県廿日市市)のシカはこのような行動を取らず、奈良公園周辺
運動後のチョコレートミルクは本当に効果があるのか。病みつきになるおいしさをもたらす糖分は、回復に重要な役割を果たしている。ただし、有効なのは特定の種類の運動の後だけだ。 (PHOTOGRAPH BY ILDI PAPP, PICTURE PRESS/REDUX) 長距離のランニングやサイクリングを終えると、体にエネルギーを補充する時間だ。プロテインバー、電解質(イオン)飲料、バナナ、プレッツェルなど、選択肢は豊富にある。 米国では定番の商品として売られているチョコレートミルクもそのひとつだ。持久力を必要とするアスリートの多くが、体力回復を促すためのリカバリードリンクとしてチョコレートミルクを飲んでいる。たとえば、米国の多くのマラソン大会では、レース後の軽食のひとつとして提供されている。専門家によれば、これには科学的な裏付けがあるという。 「チョコレートミルクがすべてのリカバリードリンクより
正常なオピオイド受容体の分布を示す人間の脳の横断面をポジトロン断層法(PET)でとらえた画像。最も多い部分が赤で、黄、緑、青の順に少なくなる。依存症治療薬のナルトレキソンは、オピオイド受容体に結合して働きを阻害することで効果を発揮する。(IMAGE BY PHILIPPE PSAILA, SCIENCE PHOTO LIBRARY) アイルランドのダブリンに住む俳優、オルガ・ウェーリーさんの体調は、新型コロナウイルスに感染してから数カ月間も悪化し続けた。会話もままならず、長時間集中することもできなくなり、50種類近い症状に苦しんだ時期もあったという。 何度も医療機関に通って治療を受けたが、症状は改善しなかった。だがその後、ウェーリーさんは有効な治療方法に出会う。オピオイド(麻薬や鎮痛剤として働く薬物)依存症の治療薬として有名な「ナルトレキソン」の低用量投与だ。 オピオイド依存症の治療では、
奈良県田原本町にある弥生時代の集落遺跡、国指定史跡の唐古・鍵(からこ・かぎ)遺跡で見つかった鳥の雛(ひな)の骨がニワトリのものであることを、北海道大学総合博物館の江田真毅教授(動物考古学)らの研究グループが明らかにした。日本最古のニワトリの雛の骨であるとともに、ニワトリを何世代にもわたって繁殖させる継代飼育が弥生時代に始まったと推察できるという。
新たに発見された肉食恐竜プロタスリティス・シンクトレンシス(Protathlitis cinctorrensis)は、古代の水辺で獲物を探していたのかもしれない。(IMAGE BY GRUP GUIX) スピノサウルス科の恐竜は異端だった。白亜紀に生きていた彼らは肉食だったが、頭蓋骨はティラノサウルスのように強い力で獲物を噛み砕くのに適した形になっておらず、もがく獲物をくわえ続けるワニのような顎を進化させていた。また、スピノサウルス類の多くは背中に印象的な帆をもち、少なくとも数種は、陸上の獲物を追いかける代わりに古代の水辺で魚を捕食していた。 そして今、スペインの約1億3000万年前の岩石の中から発見された数点の化石のおかげで、スピノサウルス類の起源が明らかになろうとしている。2023年5月18日付けで学術誌「Scientific Reports」に発表された新種の恐竜は、これまでに見つか
フランス人画家、ポール・フィリッポトーによる19世紀末の油絵。考古学者たちが、アメン神に仕える女性の神官のミイラの布をとく場面を観察する様子が描かれている。多くのエジプトマニアがいたビクトリア女王時代の英国では、ミイラの布をほどくパーティーは人気の娯楽だった。(Painting by Paul Dominique Philippoteaux via Wikimedia Commons) 15世紀のヨーロッパでは、体調に異変を感じたとしたら、それが頭痛であれ、胃痛であれ、はたまたがんであれ、エジプトのミイラを処方されたかもしれない。 数世紀にわたり、ヨーロッパではミイラが珍重された。しかしそれはミイラの歴史的価値からではなく、薬として効能があると信じられていたからだ。かつてミイラが盛んに食べられた、驚くべき理由を解説しよう。(参考記事:「ミイラ巡る黒歴史、薬として取引、見物イベントも」) 「
ホモ・サピエンスの遺伝的多様性をたどっていくと、アフリカからの大移動のはるか以前までさかのぼることができ、これらの多様性はどこから来たのかという謎が出てくる。 (PHOTOGRAPH BY REMI BENALI, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 人類進化の歴史の糸は複雑に絡まり合っている。初期人類の集団は、拡大し、移動し、互いに出会っては、ときに分岐し、ときに混ざり合っていたからだ。この糸を解きほぐすのは簡単ではないが、科学者たちは近年、現代人に見られる遺伝的多様性を利用して、過去にさかのぼることでモデルを改良してきた。 それでも科学者たちは、現代人にホモ族の共通祖先が枝分かれした時期よりはるかに古い遺伝的な要素があるという問題にぶつかっていた。一部の科学者は、ホモ・サピエンスがユーラシア大陸でネアンデルタール人やデニソワ人と交雑していたことを示す最近の証拠に触発され
植物のタンパク質にレーザーで刺激を与え、その結果起こるプロセスをX線で捉えることによって、科学者らは光合成反応に未知の段階が存在することを発見した。画像はX線で透視したハグマノキの葉。(IMAGE BY NICK VEASEY, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 光合成は地球の生命にとって不可欠だ。生態系の基礎をになう植物は、これによって自らの栄養を得ている。しかし、光合成がどのような仕組みで行われているのかについては、まだ正確にはわかっていない。 今回、ふたつの新たな実験によって、光合成の中でも特に難しい反応のひとつである水の分解における謎の一端が明らかになった。 水の分子が分解されると、酸素が空気中に放出される。「われわれ全員が依存している、あらゆる高等生物にとって不可欠な酸素は、まさに光合成の副産物なのです」と語るのは、米ローレンス・バークレー国立研究所の化学者で、ひとつ
ライム病を媒介するマダニの一種の光学顕微鏡写真。口器(写真右上)を使ってネズミ、シカ、イヌ、ヒトにかみつき、血を吸う。吸血するのはメスだけだ。(MICROGRAPH BY ALFRED PASIEKA, SCIENCE PHOTO LIBRARY) マダニによって媒介されるライム病が米国で増えている。特にこれからの春から秋にかけては注意が必要だ(編注:日本では欧米に比べて少ないが、国立感染症研究所によれば1999~2018年に231例が報告されており、特に北海道で多い。一方、日本では近年、マダニからうつる日本紅斑熱と重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の患者数と発生地域が拡大傾向にある)。(参考記事:「致死率30%の新興ウイルスが日本に定着している!」) 感染したらすぐに抗生物質を投与しなければ、心臓や神経の症状や関節炎などを引き起こし、治療が難しくなる。米国では感染者数が増加の一途をたど
二酸化炭素(CO2)と水素を原料とし、室温でメタノール合成を促す触媒を、東京工業大学の北野政明教授(触媒化学)と細野秀雄栄誉教授(材料科学)らのグループが開発した。新触媒はパラジウム(Pd)とモリブデン(Mo)からなる金属間化合物。簡単に作れて耐久性も高いと見込まれることから、実用化の可能性があるという。 メタノールはプラスチックなどの原料や燃料として需要が高い。現在は主に天然ガスを原料に量産されているが、CO2と水素からつくることもできる。2050年までに温室効果ガス排出の実質ゼロを実現にするという政府目標に向け、温室効果ガスであるCO2を有用なメタノールにする研究が近年は盛んになっている。 研究グループはレアメタルのパラジウムとモリブデンに注目。両元素の酸化物を混ぜてアンモニア中で数百度の温度で焼き、黒っぽい金属の粉末を得た。透過型電子顕微鏡で観察すると、パラジウムとモリブデンの層が交
塩基配列を決定したいDNAを固定した使用済みのフローセル(小さな流路をもつ容器)を見せる技術者。肥満症の発症に遺伝子が果たす複雑な役割についての理解を深めるため、科学者たちは肥満症の人とそうでない人の遺伝子を比較している。(PHOTOGRAPH BY CRISTINA FLETES-BOUTTE, ST. LOUIS POST-DISPATCH/TRIBUNE NEWS SERVICE/GETTY IMAGES) ある人が他の人より太りやすいのは、食生活だけではなく遺伝子のせいかもしれない。 科学者たちは、食後の満足感を弱くする遺伝子変異(バリアント)が、これまで考えられていたより多くの人にあるかもしれないことを発見している。これらの遺伝子変異を持つ人は、そうでない人に比べて食事の回数が多かったり、高カロリーの食品を多く摂取したりする。 「肥満は選択によってなるものではありません」と、英ケ
ベーグルは、米国で定番の朝食パンだ。その歴史は東ヨーロッパのユダヤ人社会に始まり、20世紀の組合運動にまで影響を与えた。(PHOTOGRAPH BY REBECCA HALE, NATIONAL GEOGRAPHIC) バターを塗ったり、たっぷりのクリームチーズとスモークサーモンをのせたりしたベーグルは、今や米国の朝食の定番になっている。2020年だけでも、2億200万人の米国人がベーグルを食べた。だが、ベーグルは元々ユダヤ教徒の食べ物だった。ここでは、ベーグルがどのように生まれ、独自の進化を遂げつつ定番メニューとなるに至ったのかを振り返ってみたい。 ベーグルの誕生 ベーグルの誕生にまつわる神話はいくつかある。良く知られている言い伝えでは、1683年のオスマン帝国によるウィーン包囲の撃退に貢献したポーランドのヤン3世ソビエスキに敬意を表してパン職人が作ったパンが始まりだという。また、9世紀
ドイツ、ライプツィヒにあるマックス・プランク進化人類学研究所のクリーンルームで作業する遺伝学者のマティアス・マイヤー氏。マイヤー氏は動物の骨製の遺物からヒトのDNAを抽出する技術を開発したチームのひとりだ。(PHOTOGRAPH BY MAX PLANCK INSTITUTE FOR EVOLUTIONARY ANTHROPOLOGY) 古代のDNAは考古学を変えた。遺体に残る遺伝物質を増やすことで、古代人の性別や祖先を特定することが可能になった。今や数十万年前のDNAまで研究できるようになり、米大陸に初めて到達した人類や、ネアンデルタール人の行方など、遠い昔の出来事について新たな理解をもたらしている。 このほど約2万年前の女性が身に着けていたと思われるシカの歯のペンダントからヒトのDNAが抽出され、2023年5月3日付けで学術誌「Nature」に論文が発表された。ほかの動物を材料にした遺
入れ子になった3本のデブリ(岩や氷の破片や塵)の帯が、若い恒星フォーマルハウトを中心に約230億km外側まで広がっている。内側の帯2本は、見えていない複数の惑星の重力によって削り取られてできた可能性が高い。画像はジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)によって、周囲の物質がよく見えるよう恒星の光を遮って撮影されたもの。(IMAGE BY NASA, ESA, CSA; IMAGE PROCESSING: ANDRÁS GÁSPÁR, UNIVERSITY OF ARIZONA, AND ALYSSA PAGAN, STSCI) 米航空宇宙局(NASA)のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が新たに撮影した画像には、ある恒星を取り巻くデブリの帯が、驚くほど鮮やかにとらえられている。太陽系にある小惑星帯と同じように、砕けた岩石や氷や塵(ちり)からなるデブリが恒星の周りを回っているこうし
メキシコ、ティファナ郊外にある幻覚剤療法の施術施設で、強力な幻覚剤(コロラドリバーヒキガエルの毒から抽出されたもの)を吸入した後、ケアを受ける元海兵隊員のジェナ・ロンバード・グロッソさん。(PHOTOGRAPH BY MERIDITH KOHUT, THE NEW YORK TIMES/REDUX) 長年うつ病に苦しんでいるレネ・セントクレアさんは数年前、幻覚作用を持つ薬物ケタミンを用いた治療の最中、自分の脳が体から切り離されて浮かび上がり、部屋の向こうに移動してゆく光景を見て恐怖に襲われた。 「ゾッとするほど恐ろしかったです。もう脳は戻ってこないのではないかと思いました」。米カリフォルニア州サンディエゴに住む弁護士で、51歳のセントクレアさんはそのときの状況を振り返る。彼女の治療に付き添っていた看護師の要請により、精神科医がすぐに駆けつけて、優しく言葉をかけながらセントクレアさんの手をし
昆虫と共生する微生物の「ボルバキア」は昆虫に感染し、宿主の性をオスからメスに転換させるなど生殖システムを操作する――。農業・食品産業技術総合研究機構などは、害虫アズキノメイガの培養細胞を用いて「メス化」を再現し、遺伝子レベルで性転換メカニズムの一端を初めて明らかにした。メス化の手法は新たな害虫駆除技術の開発などにつながる効果が期待できるという。 ボルバキアは直径1マイクロメートル(1000分の1ミリ)程度で、昆虫の過半数の種に感染しているとされる。細胞内に入って細胞を殺すことなくとどまり、細胞質内で数十個ぐらいに増え、卵子の細胞質を通じて母からのみ子に伝わる。虫の生殖システムをメスが増えるように操作することで、より確実に自身の子孫を残せるようになると考えられている。 その操作方法は、遺伝的にオスである個体の表現型がメスに性転換する「メス化」がある。このほか、オスのみが成虫になる前に死亡する
不眠症治療薬Lunesta(ルネスタ)の命名の際は、「lune(三日月型)」という言葉を使おうと考えたと、ピアグロッシ氏は言う。月の影響を感じさせ、回復と睡眠の感覚を呼び起こすからだ。 商品名とは対象的に、医薬品の一般名は、薬の化学構造や作用に関する情報を伝える特定の音節(「ステム」あるいは「共通語幹」と呼ばれる)をベースに決められる。たとえば、モノクローナル抗体薬は、名前の最後に「Monoclonal AntiBody」からとった「mab(マブ)」が付いている。(参考記事:「アルツハイマー病新薬「レカネマブ」、効果は? 副作用は?」) 米国では、一般名は販売前に決まっていなければならず、米国一般名(USAN)評議会によって指定される(編注:日本では日本医薬品一般的名称(JAN)が定められているほか、世界保健機関(WHO)が定める国際一般名(INN)もある)。「最後についているステムは、薬
米国では3万種類の医薬品が販売されており、米食品医薬品局(FDA)は毎年50種類の商品名を新たに承認している。(PHOTOGRAPH BY H.ANGELICA CORNELIUSSEN, 500PX/GETTY IMAGES) バイアグラ、ルネスタ、アドエア、パキロビッドなどの処方箋を受け取ったとき、薬の名前はなぜこんなに謎めいているのかと不思議に思った経験がある人もいるかもしれない。新薬の名前は、製薬会社の重役たちが会議室に集まって、適当に無意味な音を口に出したり紙に書いたりして決めているのだろうか。実のところ、それほど単純な話ではない。 医薬品の商品名には、混同による投薬ミスを最小限に抑えるための安全策が施されていることを知ってほしいと語るのは、米ネーミング開発会社ブランド・インスティチュートのスコット・ピアグロッシ氏だ。「医薬品の名前は、膨大な反復作業をもとに、深く考え抜かれた末に
自律神経系を回復させるための特別なリハビリプログラムを受ける新型コロナ後遺症患者。プログラムでは、患者は横になり、呼吸法によって副交感神経を優位にして、一連の緩やかな動作をゆっくり行う。(PHOTOGRAPH BY IRA BLOCK, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 2021年5月、37歳のジェシカ・ランバートさんは米シカゴにある新型コロナウイルスの後遺症(罹患後症状)クリニックを受診し、数カ月にわたって倦怠感が続いていると訴えたところ、理学療法士から週1回の運動プログラムに取り組むよう言われた。ランバートさんはもともと活動的なタイプだったが、ウェイトリフティングやサイクリングを組み合わせたセッションを終えると、これまでに感じたことのないような疲労感に襲われた。翌日は朝から体調が悪く、48時間後には発熱、筋肉痛、吐き気、片頭痛などの症状がピークに達した。 「ベッドから
米ニューヨーク・シティのオークションハウス「クリスティーズ」に出品された伝説のバスケットボール選手マイケル・ジョーダンのスニーカー。スニーカーファンは、このような貴重なシューズに大金を払う。1980年代にジョーダンとナイキが「エア ジョーダン」を発売したときにブームの幕は開けた。(PHOTOGRAPH BY JOHN ANGELILLO, UPI/ALAMY STOCK PHOTO) スニーカーが誕生したのは1860年代の英国で、当時は上流階級がクロッケーやテニスをたしなむときに履くものだった。 それ以降もずっと、ファッション性よりも機能性が重視されてきた。しかし、現代のスニーカーはまさに文化だ。それは自己表現であり、高尚なアート作品でもある。美術館に展示されることもあれば、デザイナーのオークションハウスで1足数百万ドルの値がつくこともある。 スニーカー文化のはじまりは、1984年にナイキ
高齢者に広がっている虫歯「根面う蝕(こんめんうしょく)」の原因は、菌が作る酸で歯が溶けることに加え、歯に元から存在するタンパク質分解酵素の活性化も原因であることを、東北大学大学院歯学研究科の高橋信博教授(口腔生化学)らが明らかにした。虫歯の進行を抑える「フッ化ジアンミン銀」や、お茶に含まれるカテキンなどが酵素の働きを抑制することも分かった。 根面う蝕はわずかに茶色になることもあるものの、あまり目立たない。痛みがほぼないが、あっという間に進行し、ある日突然歯が折れたり割れたりする。年を重ねて歯ぐきが下がり、露出した部分の歯が狙われる。歯が黒くなり、徐々に進行する小児や成人の虫歯とは異なり、その発症のメカニズムはよく分かっていなかった。 歯は3層構造になっており、一番外側の硬いエナメル質の下にある象牙質、セメント質といわれる2つの部分は軟らかい。エナメル質は歯の見えている部分では厚く、根っこに
天敵から逃れるために刺激を与えるとピクリとも動かなくなる「死んだふり行動」をする虫の一つ、コクヌストモドキは、生息している緯度が高くなるほど行動が頻繁になり、持続時間も長くなることがわかった。岡山大学学術研究院環境生命科学学域の松村健太郎研究助教らが明らかにした。死んだふり行動は昆虫学者のファーブルや進化論で知られるダーウィンも興味を持った行動だが、その頻度や時間が南北にかけて変化していく「緯度クライン」を示したのは世界で初めてという。 コクヌストモドキは世界中に分布する米や小麦粉など穀物を食べる体長4ミリほどの害虫。ハエトリグモやサシガメといった天敵に出会うと死んだふりをして、相手の興味がそれたすきに逃げる行動が知られている。松村研究助教らは、2016年~2021年に北は青森県五所川原市から南は沖縄県西表島まで全国38地点のコイン精米機を巡り、コクヌストモドキを集めた。その後、同じ環境で
このナミビアのチーターの写真は本物? AIが生成した画像? 答えは次のページに。なお全てに同じクレジットをつけている。(PHOTOGRAPH BY FRANS LANTING, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 偽の画像は日々進歩し、本物と見分けが付かなくなっている。現在では、「Midjourney(ミッドジャーニー)」や「DALL・E(ダリ)」といったウェブベースのソフトを使えば、誰でも簡単に画像を生成したり、改ざんしたりすることができる。 幸い人間には偽画像を嗅ぎ分ける本能が備わっていると、米ニューヨーク州立大学バッファロー校で情報工学の教授を務めるルー・シウェイ(呂思偉)氏は言う。ルー氏は現在、AIを使ってAIを制御する方法を研究中だ。そしてAIに合成画像を見分けさせるには、人間がどうやってそれを見分けているかを教えるのが最善の方法だと発見した。 人々は長い間、偽画
米国マサチューセッツ州ブリッジウォーターにあるワイマン・メドー保護区の倒木で、夜に甲羅干しをするトウブニシキガメ。(PHOTOGRAPH BY TIM LAMAN, NAT GEO IMAGE COLLECTION) ある暖かい春の夜、オーストラリア北東部の沿岸都市タウンズビルのロス川で、2人の科学者がカヌーに乗り込んだ。2人は膝にカメラを乗せ、手に双眼鏡を持ち、カヌーで川を進む。 程なく、2人は奇妙なものに気付いた。淡水ガメのクレフトマゲクビガメが、まるで日光浴をするように、月明かりを浴びていたのだ。 「当時はあまり気にしていませんでした」とオーストラリア、ニューイングランド大学の生態学者エリック・ノードバーグ氏は振り返る。「誰も見たことがないものを発見することは、最近ではめったにありませんから」 しかし、2017年のその夜に見た光景について周囲に尋ねてみると、カメが夜に陸へ上がって甲羅
キンルリホコリ(Lamproderma scintillans):森に行ったら、湿った場所をのぞき込んで、粘菌を探してみよう。この宝石のような球体を載せた粘菌は、葉の端でよく見られる。ここでは、最も人目につきやすい繁殖段階の粘菌の姿を掲載する。(PHOTOGRAPH BY ANDY SANDS) アリに大接近 アリに大接近
人間の目の拡大画像。瞳孔、そのまわりの虹彩、眼球の表面にある毛細血管が見える。人間が目を潤して保護するためにまばたきをすることは古くから知られているが、この現象がどのように進化してきたのかについては、まだよくわかっていない。マッドスキッパーという水陸両生の魚類についての新たな研究が、その手がかりを示している。(PHOTOGRAPH BY JOE MCNALLY, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 人間は毎分15〜20回まばたきをする。ほぼ無意識のうちに上まぶたをすばやく開閉させ、目を守って清潔に保ち、潤いを与える行動だ。四肢のある陸上の脊椎動物(四足動物)の大半が共通してもつ反射運動だが、魚などの水生動物やその祖先にはほとんど見られない。 まばたきはなぜ、どのように進化したのだろうか。魚が徐々に陸に上がり始めたのは約3億7500万年前のことであり、その過程を実際に観察する
梅毒を引き起こす細菌「トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)」は性行為によって感染するが、感染した妊婦から胎児にうつることもある。米国でコロナ禍前に比べて大幅に増加している3つの性感染症のうちの一つだ。(MICROGRAPH BY AMI IMAGES, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 米国で性感染症が急増している。米疾病対策センター(CDC)が2023年4月11日に発表した最新データによると、2021年には淋病、梅毒、先天梅毒が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の水準に比べて大幅に増加した。いずれも予防が可能で、早期に発見すれば治療できる。だとすると、なぜ性感染症は増えているのだろうか? 医療システムが新型コロナ感染症によって混乱し、疲弊したのは事実だ。しかし、コロナ禍は性感染症が急増した理由の一部にすぎない。性感染症に対する昔からの
私たちの体の中や表面には無数の細菌が生息しており、そのほとんどが何らかの恩恵をもたらしている。このほど、ある種の細菌が、がん細胞を守っていることが研究により明らかになった。この発見は、がんと闘うための新たな戦略のヒントになるかもしれない。(ILLUSTRATION BY RUSSELL KIGHTLEY, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 人体の中に生息している細菌のほとんどは、私たちの生命維持に役立っている。だが最近の研究から、一部の細菌は腫瘍の中に入り込んで、その増殖や転移を助け、免疫系ががん細胞を破壊するのを困難にしていることがわかってきた。 2022年11月に学術誌「ネイチャー」に発表された研究により、口腔がんと大腸がんの中に生息している細菌は、人間の免疫反応を抑制し、がん細胞がより速やかに広がるのを助けることによって、がんの進行を直接促していることが示された。また、同
コロンビア、マニサレス近郊のロスネバドス公園でランニングをする女性。スポーツをする女性は増えているが、月経周期が運動に果たす役割についてはまだほとんどわかっていない。大切なのは自分の体の声を聞くことだと、科学者は言う。(PHOTOGRAPH BY SOFIA JARAMILLO) 女性にとって、今よりもっと効果的な運動の仕方はあるだろうか。たとえば、自分の月経周期を活用するというのはどうだろう。トップアスリートからジムで軽い運動をする程度の人たちまで、体の自然なホルモンの変動が、運動にどのような影響を及ぼすのかを知りたいと思っている人は少なくない。 TikTokに目をやれば、インフルエンサーたちが、月経周期の初期に重いウェイトを持ち上げることで筋肉が付きやすくなると勧めている。また英ガーディアン紙などの既存メディアも、運動のルーティンを月経周期に合わせるためのガイドを掲載している。 しかし
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