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ノミやダニに関する研究に長いこと使われたのち、引退したビーグル犬のキャロウェイ。米国ワイオミング州にある「カインドネス・ランチ・アニマル・サンクチュアリ」にやってきたあと、初めて外に出かけたときの様子。この団体は、毎年約250匹のビーグルと、80匹ほどのネコの里親を見つけている。(Kindness Ranch Animal Sanctuary) マロリー・コーミエ氏が生後3カ月になるニュージーランド・ホワイト種のウサギを引き取ったのは、6年前のことだった。セロリの茎のような長い耳と、額にモヒカンのように逆立った毛が生えたオスのウサギだ。 コーミエ氏は、このウサギにチックピーという名前をつけた。一時的に使っていた犬用のケージから、リビングに設けた大きな囲いに移すと、チックピーはそれまで知らなかった自由を満喫するかのように、あちこち飛び跳ねはじめた。 多くの動物たちと同じように、チックピーが生
ペルーの「聖なる谷」を400メートル下に見下ろす断崖絶壁の中腹につり下げられたカプセル型ホテル。(PHOTOGRAPH BY SKYLODGE) せっかくの冒険旅行も、荷物を置いて寝床についたら終わってしまうのはもったいない。スウェーデンの浮遊式ホテル、米国ワイオミング州の森林監視塔など、世界にはヤバいともいえる一風変わった宿泊施設が数多くある。 1. ペルーの断崖絶壁で一泊する インカ人にとって多少のめまいは大した問題ではなかったようだ。彼らは山からの涼しい風が通る断崖絶壁に倉庫を作り、作物を貯蔵していた。マチュピチュは侵略者から守るために高い山の尾根に築かれたインカの都市だ。 そんなインカの人々にとっても「スカイロッジ・アドベンチャー・スイート」はきっと満足のいくものだろう。彼らの心のふるさとである「聖なる谷」(ペルーの古都クスコ郊外に位置するウルバンバ渓谷一帯)を約400メートル下に
動物園のキリンで確認された数量を処理する能力は、野生のキリンが生存するうえで役に立っているかもしれないと研究者たちは言う。(FRANZ LANTING, NATIONAL GEOGAPHIC IMAGE COLLECTION) 陸の哺乳類の中で最も背の高いキリン(Giraffa camelopardalis)。彼らの頭は2階建ての建物に相当する高さにある。そんな高い所にある頭で一体何を考えているのだろう。もしかしたらキリンは彼らなりの算数をやっているのかもしれない。2026年6月26日付の学術誌「Scientific Reports」に掲載された論文で、研究者たちは少なくとも一部のキリンが頭の中で数量を足し合わせられることを示した。これはすべての動物に備わっている能力ではなく、より高度な計算能力の基礎となっている可能性がある。 研究はスペインのバルセロナ動物園にいる4頭のキリンを対象に行わ
モロッコの伝統馬術「トゥブリダ」では、騎手の一団が一斉射撃を行い、クライマックスを飾る。写真は、ヌーラ・レブダーウィ(左から2人目)が発砲後に馬を制止しているところ。彼女はモロッコでも数少ない女性だけのチームに所属している。(PHOTOGRAPH BY CHANTAL PINZI) 何世紀にもわたって、男性だけのものだったモロッコの伝統馬術トゥブリダ。しかし今、女性の騎手たちがこの荒々しい伝統を刷新しようとしている。 幼い少女だった頃、ザヒア・アブレイトは父親に連れられて「ムーセム」という地方の祭りに行くのが何よりも好きだった。そして、祭りで行われる「トゥブリダ」に参加する父親を見るのも大好きだった。トゥブリダとは何世紀も前から行われてきた馬術で、騎手の一団が騎兵隊よろしく土の馬場で突撃をかけたり、同じタイミングで馬を操ったりするのが見られる壮観な競技だ。騎手たちは一連の演技の最後に、馬を
米バージニア州アッシュバーン湖で打ちあげられた花火。最新の研究から、このような花火が一部の野生動物を危険にさらしていることがわかってきた。(Karlsson Photo, Adobe Stock) 2025年1月1日、あるハイカーが恐ろしい光景に遭遇した。雪に覆われたハイキングコースのあちこちに千羽を超える鳥が落ちていたのだ。ほとんどが若い鳥だった。ブルガリア、スレドナ・ゴラ山脈での出来事だ。 その後行われた調査で傷、打撲、羽毛の欠落や内出血、翼の骨折などが確認され、大量死の原因は前夜に近隣の街で行われた花火大会であるという結論が下された。鳥たちは音に驚いて逃げ出し、木や別の鳥にぶつかったようだ。論文は2026年1月30日付けで学術誌「diversity」に掲載された。 こういった事故は頻繁に起きていると考える専門家は多いが、記録が残っているものは少ない。その理由について、野生動物の保護や
アフリカにすむ一部のデバネズミの農業と呼べるかもしれない行為は、人類が登場する前から行われている可能性がある。(DR. KYLE FINN) 農業、つまり「土壌を耕し、作物やその他の食料を生産する行為」をする哺乳類は、長年、私たち人間だけだと考えられてきた。 その認識は2022年に覆された。ナントウホリネズミ(Geomys pinetis)という米大陸のげっ歯類が、広大な地下トンネル網を掘って食べかけの根の再生を促すだけでなく、自分たちの排泄物を使って土壌をさらに肥沃にしていることが、査読付き論文で報告されたのだ。 研究を率いた米フロリダ大学の生物学者のフランシス・プッツ氏は、当時、ナショナル ジオグラフィックに「農作物の管理を農業と呼ぶならば、ホリネズミは農業を営んでいると言ってよいと思います」と語っている。氏の論文の共著者は、ホリネズミは厄介な侵入者どころか、生態系を作り上げて豊かにす
この記事は、老化治療研究を深掘りする連載(全6回)の第2回です。第1回「老化は本当に治療できる? 最前線の研究者に聞く「若返り医療」の現在地」は無料で全文公開しています。 中西さんの研究チームが発見し「老化を治療できる」かもしれないと期待されている老化細胞の除去の仕組みは、GLS1阻害剤と呼ばれるものを使うものだ。2021年、「サイエンス」誌に発表した論文で、中西さんは、「GLS1阻害剤が老化細胞を選択的に除去できるという発見」と、「老齢マウスにGLS1阻害剤を与えると老化症状を改善できた」という実験結果を報告した。 つまり、老化細胞を除去する薬になりうる候補を見つけ、それによって個体老化を改善できる可能性をマウスの実験で示唆した、というのが画期的な点だった。 こういったふうに、老化細胞を除去することで個体老化を改善するという考えは、セノリティクス(Senolytics)と呼ばれる。先述の
英国ノーフォーク州で、草花の手入れするガーデナー。(ERNIE JANES, NATURE PICTURE LIBRARY) 医師が通常行うのは、薬の処方や治療だ。しかし、心身の健康を改善するために、ガーデニングなどの活動を勧めるケースも増えているという。 「社会的処方」と呼ばれるこの取り組みが、世界中で広がりを見せている。2020年、英国政府はメンタルヘルス問題に対処するため、「緑の社会的処方」プロジェクトに577万ポンド(当時のレートで約8億円)を投資した。米国では、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しむ退役軍人に対して園芸療法が行われており、スカンディナビア諸国では、神経疾患をもつ人々に感覚刺激を与える「セラピーガーデン」が活用されている。 長年ガーデニングを愛好している米国のコメディアン、ザック・ガリフィアナキス氏は、最近のNetflixシリーズ『ザック・ガリフィアナキスの知ろ
シャチがマンボウの尾を押さえているところに、別のシャチが突進してきてマンボウを粉々にした。(VIDEO BY KATY AYRES) 目の前で繰り広げられている光景を見た海洋生物学者のケイティ・エアーズ氏は、水中カメラを握りしめたまま思わず叫んだ。「何てこと! 信じられない!」 1頭のシャチがマンボウの尾を押さえ、そこに別のシャチが猛スピードで突進してきて、マンボウを粉々にしてしまったのだ。あまりに激しい衝突で、バキッという恐ろしい音が水中に響きわたった。この行動は、学術誌「Frontiers in Ethology」に7月23日付けで発表された論文で詳しく報告された。 「めちゃくちゃな状況でした」と、論文の最終著者で「Conexiones Terramar」という非営利団体に所属する海洋生物学者、エリック・イゲラ氏は話す。同氏も、メキシコのカリフォルニア湾でこの事件を目撃していた。 最初
科学者らは、皮膚と脳がどのように情報をやり取りしているのかを解明しつつある。(BOY_ANUPONG, GETTY IMAGES) 何十年もの間、医師らは、慢性的な皮膚疾患とメンタルヘルスとの関係を、主に心理的な観点から捉えてきた。にきびや湿疹、乾癬といった人目に触れる皮膚疾患を抱えて生きることが、不安やうつ、社会的孤立のリスクを高めると考えられていたのだ。 しかし近年では、多くの研究によってこの見方に疑問が投げかけられている。 「皮膚疾患とメンタルヘルスの関係は、単に心理や美容に起因する問題ではなく、生物学とも深いかかわりがあることがわかってきました」と米中央ミシガン大学の精神皮膚科学・精神医学・行動科学教授であるモハマド・ジャフェラニー氏は言う。 研究によると、皮膚と脳は「皮膚―脳軸」と呼ばれる複雑な双方向のシグナル伝達ネットワークを通じてやりとりをすることで、免疫系、神経系、内分泌系
日本でも「老化研究」といった研究分野が、存在感を持つようになって久しい。最近では「老化は治療できる」という言葉もよく目にする。「老化治療」の一例として「セノリティクス」というキーワードも聞く。 実際に、どのような研究が進んでいるのだろうか。 国が構想、策定する「ムーンショット目標」なる研究開発制度がある。これは「未来社会を展望し、困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題等を対象として、人々を魅了する野心的な目標」とのことだ。そのうちの一つ、ムーンショット目標7は、「2040年までに主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現」するというもので、さらにその中のプロジェクト3は「老化細胞を除去して健康寿命を延伸する」という目標を掲げた(2026年3月に終了)。 「老化細胞」を除去することで老化を防ぎ、健康寿命を伸ばす、
魚の缶詰を食べれば、オメガ3脂肪酸やタンパク質などをたっぷり摂取できる。(REBECCA HALE, NATIONAL GEOGRAPHIC) 栄養の専門家は、加工食品よりも新鮮で加工されていない食品を勧めることが多いが、魚の缶詰は例外だ。 「魚の缶詰は単一の栄養素を単独で供給するものではなく、完全な食品なのです」と登録栄養士のコリン・ロバートソン氏は言い、イワシ、サバ、アンチョビ(カタクチイワシ)などの脂ののった魚に含まれるオメガ3脂肪酸やビタミンB12、Dの豊富さを強調する。 ツナ(マグロやカツオ)、サケ、ニシンもそうだが、こうした高タンパク・低カロリーの魚は、缶詰でも実用的な選択肢になると、米クレイトン大学の助教で内科医のソナル・へールター氏は言う。「年間を通して手に入りますし、生の魚と比べて価格も手頃ですから」(参考記事:「肌や免疫機能にも有益、ケールの秘めた力を引き出す調理法とは
米ニューヨークのコニーアイランドで、寝椅子に横たわって日光浴をする女性。世界中で猛暑が公衆衛生上の脅威となっている今、都市は暑熱対策を講じている。しかし専門家によると、一部の対策は、実施場所によっては効果を発揮しない場合もあるという。(ANDY BUCHANAN, ALAMY) 今年の北半球の夏は猛暑になると予想されているが、すでに記録的な暑さと湿度が各都市を襲っている。黒っぽい色のアスファルトで覆われ、排気ガスを出す車両が行き交い、高層ビルが熱を閉じ込めている都市では、猛暑の影響が特に強く感じられる。気候変動に関する情報を提供する米国の非営利団体「クライメート・セントラル(Climate Central)」が米国の主要な65の都市の熱分布を評価したところ、計5000万人のおよそ7割が、こうした都市環境のせいで少なくとも4.4℃高い気温を経験していることが明らかになった。 地表の温度分布を
本コラムでは睡眠と子どもの発達について何度か取り上げてきた。日本の子どもは世界の中でも突出して睡眠時間が短く、睡眠不足によって時に注意欠如多動症(ADHD)のような行動上の問題を呈してしまう。逆にADHDやASD(自閉スペクトラム症)では強い眠気、不眠、昼夜逆転のような睡眠リズムの異常がかなり高い頻度(半数以上)で認められ、学業や就労の際に大きな支障となることを紹介した。過去の多数の研究によって、少なくとも出生後には睡眠と発達との間に深い関連があることは今や広く認知されている。 さらに、子どもの発達には母親の妊娠中の睡眠状態も影響することが複数のコホート研究(前向き研究)で明らかになっている。例えば、イタリアで行われた3634組の母子を対象としたコホート研究(NINFEA)では、出生前に睡眠障害を抱えていた母親の子どもは、睡眠障害のない母親の子どもと比較して、就学前にADHD症状、特に多動
飼育員に手話を使うようになったチンパンジーのダー。(CENTRAL WASHINGTON UNIVERSITY ARCHIVES AND SPECIAL COLLECTIONS) チンパンジーは手話を使いこなせるのか。1960年代に、米国でその疑問に答えを出そうとする一連の実験が始まった。タトゥとルーリスは、この実験に使われたチンパンジーたちの最後の生き残りだ。2頭は生まれてからずっと、米国オクラホマ州とワシントン州の研究所を含む飼育下で過ごしてきた。 2013年以降、2頭はカナダにある非営利団体「ファウナ財団」の保護施設で暮らし、今も手話を使い続けている。メスのタトゥ(49歳)の方がおしゃべりで、215語のアメリカ手話(ASL)を操る。オスのルーリス(47歳)は、78語の手話を使う。 2頭が飼育員に対して最もよく使うお気に入りの手話は、食べ物や遊びに関する言葉だ。タトゥはチーズ、コーヒー
ライオンの体、ワシの頭と翼を持つ恐ろしげなグリフィンは、人間をさらうと考えられていた。ランベール・ド・サン・トメールによる『リーベル・フロリドゥス』の写本(1448年のフランドル派)の挿絵。フランス、シャンティイのコンデ美術館所蔵。(BRIDGEMAN/ACI) 紀元2世紀か3世紀、エジプトのアレクサンドリアで無名の人物が『フィシオロゴス』(ギリシャ語で「博物学者」を意味する)と題された書物を編さんした。48または49章から成るこの書物は、まもなく多くの本に書き写され、広く読まれるようになった。 この書物は、各章で1つの動物を取り上げ、挿絵やその動物の特徴の説明、行動にまつわる物語(自然観察だけでなく、想像上の逸話もあった)を交えて解説している。 例えば、ライオンの章にはこう書かれている。ライオンの子は、生まれたときには命がなく、ただ母親に見守られている。そこへ百獣の王である父親が現れて、
便検体の顕微鏡写真。微小な寄生虫サイクロスポーラのオーシスト(卵のような状態)が確認できる。サイクロスポーラが引き起こす腸管感染症であるサイクロスポーラ症が現在、米国で広がっている。(CDC/ DPDX/MELANIE MOSER) 2026年夏、米国では微小な寄生虫による病気が数千人規模で発生しており、公衆衛生当局は感染源の特定を進めている。 米疾病対策センター(CDC)によると、2026年7月13日現在、腸の感染症である「サイクロスポーラ症」が34の州で計1645例確認されており、さらに5100例以上が確認中となっている。特に多いのはミシガン州で、7月16日現在、今夏だけで4312例が報告されている。 同州の保健当局の発表によると、調査ではレタスやサラダ用野菜が感染源である可能性が示されているが、他の食品が感染源である可能性もまだ完全には排除できないとしている。(参考記事:「ヒトに感染
中米グアテマラのシュルトゥンにある古代マヤ遺跡で、考古学者たちが、ある隠し部屋に記された象形文字列の解読に成功した。それは、天文学者で数学者でもあったサク・ターン・ワーシュという人物が残した天文の数式だった。(TYRONE TURNER, NATIONAL GEOGRAPHIC IMAGE COLLECTION) 中米グアテマラのシュルトゥンにあるマヤ遺跡を調査していた考古学者たちが、史上初めて、古代マヤ文明の天文学者であり数学者でもあった人物の名前の解読に成功した。その名前は「白い胸の狐」を意味する「サク・ターン・ワーシュ(Sak Tahn Waax)」だった。論文は、2026年7月14日付けで学術誌「Antiquity」に発表された。 マヤの天文学者たちは長い間、その科学的功績が認められることなく、歴史の陰に埋もれた存在だった、とナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)
冷水浴にはそれなりの利点がある。しかし、科学者らは、冷水浴の効用を大げさにうたう言説があふれていることに懸念を強めている。(JONAS RÖNNBRO, ALAMY) 冷水浴は、北米などで過去10年間のうちに代表的なウェルネストレンドの一つとなった。著名人はその効果を絶賛し、一流アスリートはトレーニング後にアイスバス(氷風呂)に入る自身の動画を公開する。インフルエンサーは回復の促進や代謝の改善から、集中力の向上、長寿、さらにはドーパミンの大幅な増加に至るまで、ありとあらゆる効果があると紹介している。 しかし、冷水浴の人気が爆発的に高まる一方で、多くの科学者が、その効果を裏付ける証拠は十分にそろっていないと指摘している。 そうした「人気と科学的根拠の隔たり」を誰よりも間近で観察してきたのが、デニ・ブロンダン氏だ。(参考記事:「「幸せホルモン」ドーパミンを脳内で自然に増やす秘訣」) カナダ、シ
クマ被害が深刻なレベルになり社会問題となっている。これまで人間が遭遇するとしても山奥などに限られ、ぬいぐるみの「テディベア」やキャラクター「くまのプーさん」などに代表される親しみやすいイメージもあった。その野生動物のクマが、登山客らが行き来する山道ばかりでなく、住宅地や学校周辺、観光地などでも目撃されるようになった。人間との遭遇機会が増えただけでなく、人身被害は過去最多、死亡例も最悪水準で報告されている。 事態を重視した環境省や自治体などは住民らの安全対策などを強化し、被害を減らすためにクマの個体数管理に乗り出した。出没急増の背景としてクマの生息域の拡大などいくつかの要因が指摘されているが、人間とクマの適切な距離をどのように「棲(す)み分ける」か、新たな知恵による長期的な対応策が求められている。
ドイツの発掘チームは、密閉された中世のトイレの中から、書いたり消したりできる蝋板の手帳を発見した。(LWL-ARCHAEOLOGY FOR WESTPHALIA/E. DAOOD) 13~14世紀のあるとき、中世の多忙な人物が、おそらく何か考え事をしながらトイレの個室に入った。大急ぎで腰を下ろし、ポケットの中に入れていたかベルトに付けていた革のケースから、小さな手帳を取り出してメモを走り書きし、再びケースにしまった。その後、何らかの理由でケースはその人物の手を離れて下の穴へ落ちてゆき、永遠に失われた……かに見えた。 それから700年以上たった2026年、ドイツ北西部の都市パーダーボルンで、地中に埋もれていたトイレを発掘していた研究チームが、その手帳を発見した。 「手帳の状態の良さに、全員が驚かされました」と、発掘を監督したウェストファーレン・リッペ地域協会(LWL)ミュンスター支部の考古学
南海トラフ巨大地震の想定震源域内にあり、地震発生に関わるとみられるプレート境界の固着状態について、「長期間ほぼ変化しない領域」と「時間とともに変化する領域」が存在することを、東京大学生産技術研究所などの研究グループが明らかにした。甚大な被害が予想される巨大地震の規模や発生過程の理解につながり、事前防災対策への活用も期待できるという。 研究グループは、東京大生産研の横田裕輔准教授、海上保安庁海洋情報部の渡邉俊一主任海洋防災調査官のほか、気象庁気象研究所や海上保安大学校の研究者らで構成された。 南海トラフは、静岡県沖から九州の日向灘沖にかけて延びる海底の巨大な溝で、フィリピン海プレートが日本列島側のプレートの下へ沈み込んでいる。プレート同士が強く固着すると境界面にひずみが蓄積され、限界に達した時に巨大地震が発生すると考えられている。 ただ、固着状態は一律ではなく「ムラ」がある。しっかり固着して
牛乳からアーモンドミルクやオーツミルクといった代替品まで、「ミルク」に含まれる栄養は種類によって大きく異なる。(MARK THIESSEN, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 最近、スーパーのミルク売り場がややこしい。 消費者は何十年もの間、飽和脂肪酸の摂取量を減らすために、全乳ではなく低脂肪乳を選ぶよう推奨されてきた。飽和脂肪酸は、動脈を詰まらせる悪玉(LDL)コレステロール値の上昇や、心血管疾患や脳卒中のリスクの増加と関連していると考えられてきたからだ。 けれども近年、新たな研究により、乳製品に含まれる飽和脂肪酸は、従来考えられていたほど有害ではないことが示唆されている。(参考記事:「間違いだった「卵とコレステロール」の常識、本当の注意点は?」) 多くの新しい選択肢も登場している。ミルクの中で牛乳はもはや絶対的な地位を占めておらず、スーパーの棚には、大豆、アーモンド、
クマムシと呼ばれる無脊椎動物は、宇宙の真空環境で強烈な放射線にさらされても生存できることがわかっている唯一の生物だ。クマムシのような極限環境微生物を研究することで、苛酷な地球外環境でも生存できる生命について、そして地球外環境で何を探すべきかを知ることができる。(DENNIS KUNKEL MICROSCOPY/SCIENCE PHOTO LIBRARY) SFの世界では、何世代にもわたって地球外生命体が生み出されている。小説家H・G・ウェルズの『宇宙戦争』には、タコに似た火星人による侵略の恐怖が描かれた。一方、『スーパーマン』シリーズには、超越した能力を持つ人型の宇宙人が登場する。最近のヒット作なら、『メッセージ』に登場する手のような姿をした「ヘプタポッド」もいれば、『NOPE/ノープ』のUFO、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』で人類に協力するカニのような宇宙人もいる。 もちろん、こうい
カナダのバンクーバー島付近で発見されたカリフォルニアアシカの死骸。海水温の異常上昇で食料が減り、2014~15年には数千頭が餓死した。(PHOTOGRAPH BY PAUL NICKLEN) 太平洋北東部で、水温が異常に高い海域「暖水塊」が出現し、生態系を脅かしている。それは未来の海が直面する悲劇の前兆なのか? 最初のナガスクジラの死骸が見つかったのは太平洋北東部、米国アラスカ州南部沖に位置するコディアック島のマーモット湾でのことだった。 まだ若いクジラで、発見されたときは、体を横向きにして海面を漂っていたという。開いた口に海水が流れ込んではあふれ出し、だらりと垂れた舌が波に洗われていた。アラスカ周辺では生物の死骸を目にすることは珍しくない。だがその翌日の午前中、フェリーの乗客が近くの水面に浮かんでいる別のナガスクジラを見つけた。その雌クジラは、皮下脂肪をたっぷり蓄えて健康そうに見えたが、
昔から日焼け止めは肌を紫外線ダメージから守る有効な手段の1つだ。現在、その効果や使用感をさらに高めるとともに、紫外線以外からも肌を守る研究が進められている。 (MAURO FERMAREILLO, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 韓国にある日焼け止め(サンスクリーン)製品の研究所で、ソン・ダソル氏(39)は、ずらりと並べられた色とりどりのボトルやチューブの前を歩いていた。それらはまるで、紫外線(UV)防御技術の進歩を称えるトロフィーのように展示されていた。 氏の周囲では、同僚の研究者たちが、ビーカーやプラスチック容器の並ぶ棚を丹念に確認していた。ほかにも、エプロン姿で大きな金属鍋をかき混ぜている者もいて、その姿は化粧品の科学者というよりシェフのようだった。 「研究者としては、現状に満足することはありません」と、ソウルにある韓国コルマー(Kolmar Korea)のUVテック・
北アフリカで初めて、類人猿の化石が見つかった。これはその類人猿「Masripithecus moghraensis(マスリピテクス・モグラエンシス)」の復元図。発見された化石は、約1800万年~1700万年前のものと推定されている。(MAURICIO ANTÓN) 現在見つかっている初期の類人猿の化石のほとんどは、東アフリカから出土したものだ。その記録から、類人猿の祖先たちがアフリカからヨーロッパへと広がったのは、今から1600万年~1400万年前の中新世中期と考えられてきたが、北アフリカではじめて類人猿の化石が見つかった。それによると、現在の類人猿の起源は東アフリカではなく北アフリカにあり、そこからユーラシアに移動した可能性があるという。この論文は3月26日付けで学術誌「Science」に掲載された。 新たに発見された化石は、正確には下あごの一部と歯の一部の化石で、類人猿がユーラシア大陸
中米グアテマラの首都、グアテマラシティにあるフランシスコ・マロキン大学のポポル・ブフ博物館には、マヤ人の歯の大規模なコレクションが所蔵されている。写真はその中の1本で、翡翠が埋め込まれた唯一の臼歯だ。 (ESTUARDO MATA-CASTILLO, ANDREA CUCINA, MARCO RAMÍREZ-SALOMÓN, MARÍA BEATRIZ MONSREAL-PENICHE, CAMILO LUIN, ELMA VEGA-LIZAMA) 局所麻酔や歯科用の電動ドリル、レントゲンが登場するよりもはるか昔、古代マヤでは虫歯の穴を翡翠(ヒスイ)の詰め物で埋めていた可能性が浮上している。 マヤの遺跡では長年にわたり、翡翠や黄鉄鉱(通称「愚者の金」)などで装飾された歯が発掘されてきた。これらは歯に小さな穴を開けて石を埋め込んだもので、装飾目的だと考えられてきた。 しかし、新たな研究による
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