Y染色体論のナンセンスについては、立花隆が最近の論稿で喝破したとおりで、あの累乗増殖の簡易計算の説得力に特に補足するものはない。私がY染色体論を聞いたときに感じたのはもう少し別の低俗な関心方向のもので、普通の人間なら遺伝子の連続の奇跡を確信するよりも、むしろその断絶の確率の方に納得するのではないかという事だった。ところで平沼赳夫を会長とする超党派の保守系議員でつくる「日本会議国会議員懇談会」が政府に提出した「女系天皇を容認する皇室典範改正案の次期通常国会への提出を目指す政府に慎重な対応を求める決議文」では、「男系によって継承されてきた皇位の継承方法を今直ちに変更することは慎重に検討されるべきだ。短期審議で千数百年にわたる継承方式の変更を決定することは、拙速と言わざるを得ない」と言っている。男系天皇の継承期間を千数百年と表現していて、皇紀二千六百年の皇国史観の強調高唱を遠慮している。戦後歴史