1 ことしのはじめ、そのころ来日していた韓国の民俗舞踊家金淑子さんから話をうかがう機会があった。去年の秋日本で公演したパンソリの金素姫さんもそうだと いうことだけれども、韓国の民俗芸能の専門家は、シャーマンであるムーダン(巫堂)の家系の出身者である場合が多い。金淑子さんも、単なる舞踊家ではな く、京幾道安城の代々続いたムーダンの娘であり、京幾道巫俗舞踊の第一人者として知られている人である。 民族舞踊、民族音楽をはじめとして、パンソリにしても、また仮面劇にしても、朝鮮の民俗芸能はほとんどが巫俗を母胎として生まれてくる。そして、金淑子さ んのような巫人家系に生まれたためにムーダンになる世襲巫は、いわゆる「巫病」にかかってからムーダンになる降神巫、突発巫とはちがって、幼児のころから 歌、踊り、楽器演奏の一切の技術を習得してきた総合的な民俗芸能の伝承者でもある。朝鮮のシャーマニズムはその呪術性の一