ぶらり つれづれ 長次郎と剱岳登頂 史実は 荘厳な雰囲気が漂う芦峅寺の雄山神社=立山町、筆者撮影 富山市のいたち川沿いを花見橋まで歩き、この付近で生まれた作家の野村尚吾を偲(しの)んでいると、彼の富山ゆかりの作品「アルプスの見える庭」が思い浮かんだ。立山山麓(さんろく)の芦峅寺(あしくらじ)(立山町)で宿坊を営んだ祖先を持つ都会育ちの清純な若い女性が山に魅了され、山を介して人生を考えていくという、瑞々(みずみず)しく爽やかな印象を与える長編だ。その作品から思い立って芦峅寺を訪れた。 北陸自動車道立山ICから県道を通って、常願寺川沿いを遡(さかのぼ)る。山が迫り、谷間(たにあい)も狭まって千垣の集落を過ぎ、有峰への芳見橋を右に見て緩やかな坂を上りきると芦峅寺の集落に着く。 芦峅寺は立山登拝者の宿坊として栄えた立山信仰の拠点で、そのほぼ中央に雄山神社祈願殿がある。隣接する立山博物館の資料による