財布に万札ねじ込んで行くお祭りより、百円玉を何枚か握りしめていくお祭りの方が楽しいのは何故だろうか。 そんな懐かしい心地を楽しみながら、私は小さな露店の集団を眺めていた。 彼等は隊商の一団だ。移動しながら物を仕入れ、催事とあらばテキ屋の真似事もする商売人達である。 「北方人達が作る黒曜石のナイフだよ! 薬草採取にはうってつけ!」 「東方交易路から渡ってきた漆器はどうだい? この艶は、到底この辺じゃ出せない一級品揃いだ! 祝いに贈り物になんでもござれ! 晴れの日にお一つどうだい!!」 「西端半島の薬草はぁ~いかが~。打ち身、擦り傷、切り傷にあかぎれぇ~何にでもきくよぉ~」 茣蓙を敷き、あるいは側面が開く特殊な荷台を店にして、商売人達が少なくなった客足を引き留めるように口上を上げていく。荘民達が昼前に酔ってぶっ倒れたり、ダンスに参加するのに忙しくなる前は賑わっていたが、式が終わると毎年こんなも