時価総額1兆ドル企業が次々と生まれているテクノロジー企業は、ウォール街にとっても魅力的であり、伝統金融は有望な企業に触手を伸ばし始めている。だが、それにより軋轢が生じているのも事実。企業が掲げる戦略と、顧客の利益の最大化を図る金融企業との間で利害の衝突が起きているのである。 ここでは、伝統金融の手法も取り込みつつ、自社のビジネスモデルを進化させて復活を遂げたマイケル・デルによる、ウォール街顔負けのM&A(合併・吸収)戦略を紹介したい。 パーソナルコンピュータのパイオニアであるマイケル・デルは、テキサス州オースティンにある自身の慈善団体の本部にいた。この日の朝、同じ州内でアマゾン創業者のジェフ・ベゾスが、自身が設立したブルーオリジンのスペースシャトルに乗って宇宙へと飛び立ったことは彼も知っていた。 「私は地球を離れなくても十分満足です」 デルは肩をすくめ、クスリと笑う。その前の週にはリチャー