福島県伊達市の住民の被ばく線量を分析し英専門誌に掲載された2本の論文。赤い文字で「Retraction」(撤回)と書かれている 東京電力福島第1原発事故後、福島県伊達市の住民の被ばく線量を分析し、英専門誌に掲載された論文が7月、撤回された。本人の同意を得ていないデータが多数使われ、被ばく線量を過小評価する計算ミスが見つかるなど、論文を巡っては問題が次々と露呈した。「故意ではなかった」とする著者側の説明を踏まえたとしても、科学者が不適切にデータを扱った上、住民の健康に関わる被ばく線量を低く見積もっていた責任は重い。国の放射線審議会でもこの論文が一時、資料として引用されていたこともあり、原子力規制行政にも影響を与えた。(共同通信=永井なずな) ▽博士号取り消し 「倫理上不適切なデータ使用が確認され、著者側は撤回に同意、全ての調査に従った。本文中の数字も間違っている」。英専門誌「ジャーナル・オブ