第34回将棋ペンクラブ大賞観戦記部門において、藤井奈々女流初段が執筆した《第34期竜王戦七番勝負第3局 藤井聡太―豊島将之(読売新聞)》が優秀賞を受賞した。藤井女流初段は、1998年生まれの24歳。まだ20代前半の女流棋士が、ベテラン執筆陣が多い観戦記部門で受賞するのは前例のないことだ。 そんな藤井女流初段、そして20年以上にわたって棋士の立場から観戦記を執筆している勝又清和七段に、観戦記者の仕事ぶりや観戦記のあり方を聞いていきたい。 「(藤井女流初段は)娘と同じ歳なんですよ」と笑う勝又七段。「藤井さんと私の観戦記の棋風は、居飛車と振り飛車くらいちがう」というお二人に、まずは「観戦記とはどういうものか」から教えていただこう。 観戦記は、決められた分量で書かなくてはいけない ――まず、将棋の「観戦記」とは、どういうものか教えていただけますか。 勝又 これは将棋の歴史とも関係してきますが、将棋