マルコ・ベロッキオ監督『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』が8月9日(金)より公開となる。1978年のイタリア元首相誘拐暗殺事件を、犯人グループの一人、被害者の妻、ローマ法皇など関係者の多角的な視点から、ときに幻想やあからさまな虚構をも交え、虚実の境界を曖昧にしながら描いていく大作だ。 評論家の柴崎祐二は、本作の「虚構」について、単に幻惑的な演出であるのみならず、歴史的事件を物語として扱うことについての内省的な問いになっているのではないかと指摘する。連載「その選曲が、映画をつくる」第17回。 ※本記事には映画本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。 イタリア元首相誘拐事件を「外」から多面的に描く 1978年3月16日、午前9時2分、ローマ市中心部のマリオ・ファーニ通り。元首相でキリスト教民主党党首のアルド・モーロが、何者かによって誘拐された。 当時のイタリア社会で