映像や他ジャンルの舞台にも積極的に出演し、そこで得た経験を反映した舞台を自ら企画する歌舞伎役者は、昔から少なくはない。とはいえ今年は、芸の脂が乗り始めるアラフォー世代の人気役者たちが企画する初心者向けの公演が、例年にないほどの当たり年だ。ここ最近市川團十郎や中村勘三郎などの名優たちの逝去が相次いで、歌舞伎界にピンチムードがただよっていたけど、それを一気に挽回するような好舞台ぞろい。その公演が9月以降、一気に関西で上演される。 まず中村獅童は、名作童話『あらしのよるに』を新作歌舞伎として上演。獅童自身「気ぐるみではない方法で動物を表現」と言う通り、歌舞伎では衣裳の工夫と巧みな"演技"で、役者が人外のモノに成りきるのは得意とする所。オオカミとヤギの友情という物語も、立場の異なる者同士がその違いを超えて、大きな目標に向かう・・・という歌舞伎でもよくある設定だと考えたら、意外と相性のいい題材かも?