選考委員が総入れ替えとなり注目を集めた今年の野間文芸新人賞。平田俊子氏(50)『二人乗り』(講談社)と共に受賞が決まった青木淳悟氏(26)『四十日と四十夜のメルヘン』(新潮社)の評価をめぐって、選考会で劇的な逆転が起きた。 話は2年前にさかのぼる。同書所収の2編のうち表題作は、保坂和志氏の激賞を受けた第35回新潮新人賞の受賞作。町田康、川上弘美の両氏もその選考に加わっていたが、当時の評価はかなり厳しかった。 町田氏〈思わせぶりばかりが目立つ意味不明の悪戯書きで、こんなものは駄目だ、とおもいっきり×をつけた〉。川上氏〈二回読み直したが、その構造のめざすところが私にはわからなかった〉。(「新潮」2003年11月号の選評より) ところが今回、野間新人賞の選考会で2人は、積極支持に回った。選考後の会見で町田氏は「新潮新人賞の時は評価できなかったが、今回は非常に高く評価できた。その時読めなかった私が