『人類はなぜ〈神〉を生み出したのか?』(レザー・アスラン 著/白須英子 訳)文藝春秋 なぜ人類は〈神〉という概念を生み出したのか? 著者は認知科学、考古学、歴史学などの最新知見を踏まえて、その難問に挑んだ。 考察の出発点には、進化心理学が唱える「心の理論」が据えられている。それは人類が進化の過程で獲得した、人やモノ、出来事の背後にある意図や動機を推察する能力だ。 「人類は宗教的衝動を持つことで子孫を残すのに何かしらの優位性を得たはずだ、という前提に立って、学者たちは200年以上に亘って、宗教の起源を探ってきました。しかし、認知科学者、進化生物学者は、宗教的衝動は子孫を残すのに何らの優位性ももたらさないどころか、資源とエネルギーを浪費するので不利に働く、という結論に達しました。ゆえに多くの専門家は、宗教的衝動は人類が進化の過程で得た『心の理論』などの能力から偶然生まれた副産物であるとする