ハリガネムシがなぜわざわざ手間暇かけてカマキリの神経伝達物質をつくり、その行動を操って入水させているかというと、水中に脱出してパートナーとめぐり逢い、交尾をするためだ。 なかには、小さな水たまりでうっかり宿主から飛び出てしまうハリガネムシもいるが、そのような粗忽者(そこつもの)は水たまりが乾けば干からびて死に、まさに「針金」と成り果ててしまう。宿主にひどい仕打ちをしているようにも思えるが、ハリガネムシにとってもこの脱出はやり直しのきかない命がけの一大イベントなのだ。 脱出の多くは夏から秋にかけて行われ、水中で出会った雄と雌は絡み合って交尾をし、越冬後、翌年の5月から6月にかけて水中の石などに卵を産みつけて死ぬ。 1〜2か月で卵からふ化した幼虫は、ユスリカやアカイエカ、フタバカゲロウといった川の中の小さな有機物を食べている水生昆虫に取り込まれてその体内に侵入。腸管を破って腹部へと移動し、身体
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