集落消滅、物流危機、需要減退……、日本の農業が直面する数々のピンチ。しかしそれらをチャンスに変えている全国の「現場」を取材した『人口減少時代の農業と食』の冒頭を公開します。 あなたは今日何を食べただろう。明日も、明後日も、これからもずっと、望めば同じものを食べることができる。そう思っていないだろうか。 人口減少と高齢化が進む日本で、その期待を叶えることは、実は結構難しい。 農業現場の人手不足について耳にしたことのある人は多いはずだ。コロナ禍で外国人が入国できなくなり、外国からの労働力に頼っていた野菜の大産地が人手不足に陥ったことは、記憶に新しい。作業が機械化できていなくて人手に頼ることが多い野菜や果物ほど、生産する農家は減っている。 こうした生産上の課題が騒がれる一方で、むしろ流通、つまり農産物が消費者のもとに届くまでの工程にこそ、危機が迫っている。しかし、農業界においてこのことは見落とさ