ウィーンを訪れる観光客が必ず行くスポットに、中央墓地があるだろう。ここは、ウィーンで生まれたり、活躍したり、死んだりした多くの音楽家たちの墓が集合しているからだ。もっともモーツァルトのは「偽物」だし、ブルックナーのはリンツの教会の地下の骸骨の山の中にあり、カラヤンのはザルツブルクにある。では、19世紀末から20世紀初頭に一世を風靡したウィーン宮廷歌劇場総監督であり指揮者、作曲家であったグスタフ・マーラーの墓はどこにあるか?「私の墓を訪ねてくれる人なら、私が何者だったか知っているはずだし、そうでない連中にそれを知ってもらう必要はないからね。」と遺言されては、訪ねないわけにはいかない。 当時インターネットなどなかったし、無知な学生だった筆者にとって、マーラーの墓についての事前調査は困難だった。有力情報が得られないまま、旅行は始まってしまった。ウィーンに着いてから何とかなるだろう…。アルベルティ