少年は急峻な岩肌を素足で登っていた。 背中に担いだ革袋の帯が、少年の細い肩に食いこむ。 中には水がなみなみと貯えられ、少年の歩幅にあわせてタプン、タプンと音をたてる。 ひたいから流れる汗を、頭のひと振りでふき飛ばすと、少年はさらに足早となり、ゴツゴツとした岩肌を力強く登っていく。少年の後ろには、広大な森林が、まるで緑色の海のように広がっていた。 急な岩場を登りきると、薄暗い森の中を進む。そして森を抜けると、日の光が射し込む開けた場所に出る。地形をうまく利用した丸太作りの家に着くと、少年は石畳に並べられた木桶に、革袋の水を、慎重に移していった。 「水汲みおわったよ!」 すべての水を移し替えると、少年は家へ向かって声を張り上げた。そして、革袋を壁にかけると、さっきとは反対側の、南に下るゆるやかな斜面を駆け出して行った。 「あの子はまた、チルド爺さんのところへ行ったのかい?」 駆ける少年の小さな