指先は、盤上に描かれた光の道を辿った。 平成30年12月10日、関西将棋会館「御上段の間」、第90期棋聖戦2次予選。山崎隆之八段との斬り合いの終盤戦を迎えた谷川浩司九段は、一気の攻めに転じた。 まだ自玉が相手の攻め駒に包囲された状態で、薄氷の勝ちを読み切った。最後は美しい詰将棋のような手順になった。代名詞「光速の寄せ」は、今も眩しさを失っていなかった。 藤井聡太七段の「憧れの存在」 谷川浩司九段。56歳。 1976年に14歳で史上2人目の中学生棋士になった。終盤において最速最短の手順で相手玉を寄せていく華麗なスタイルは、80年前後に全国で将棋ブームを巻き起こす起点となり、8歳下の羽生善治らの世代に棋士の夢を見させた。40もの歳が離れた藤井聡太七段さえも「小さな頃からの憧れ」と公言する。 永久に不滅かもしれない史上最年少21歳での名人就位、タイトル通算獲得数は歴代4位の27期を誇る十七世名人
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