1995年の震災で半壊した実家は、ワタシが生まれたときで築50年は経っていたように思う。屋根を支える太く曲がった梁を、祖父は自慢にしていた。子供の頃は見てくれのわるい大木にしか見えていなかった。大人になっても愛着を抱くことはなかった。いまは妙に懐かしい、というか、しっかり見ておけばよかったという思いが募っている。 部屋の真ん中に立つと、抜け落ちた天井から空を見上げることができた。それでも梁はびくともしていなかった。忘れていたこのときの景色が、本書の中の「木の癖、人の癖を読む」の章を読んでいて浮かんできた。 育った場所によって、木には癖が生じる。斜面の木は、風を受け、幹は捩れてしまう。木は必死に元に戻ろうともするわけで、ひねくれた木ほど目がつまっていて、強度に優れている。だから梁や桁にするのに適していて、田舎作りの家では曲がった部分を梁に使っていたという。うちのジイサンの自慢もホラではなかっ