「性教育団体『いのちの授業』ここいく」に寄せられた子どもたちからの感想文を見る代表の中村暁子さん(左)と古川明美さん=岐阜県各務原市で2024年3月3日午後5時19分、田中理知撮影 その日、授業を行う小学校からの要望は「性交については扱わないでほしい」だった。 岐阜県各務原市の市民団体「性教育団体『いのちの授業』ここいく」が訪問先からこうした要望を受けることは珍しくはない。いつも通り、模型などを使って体の仕組み、生理や射精、妊娠、出産について触れたが、性交は教えなかった。でも授業後、子どもたちからは疑問の声が上がった。「赤ちゃんはどこから来るの?」 ここいくは、2010年に中村暁子さん(54)ら子育て中の母親が中心になって設立した。性に関する真偽不明の情報がインターネット上であふれる中、子どもに正確な知識を伝えたいとの思いからだった。助産師でもある中村さんは、望まない妊娠をする女性と接する
茨城県議会が4月からハラスメント相談窓口を設置する予定を立てたものの、最大会派「いばらき自民党」議員会長の白田信夫議員(71)が「議員は自制を持っている。個人的には反対」と異論を挟み、設置に向けて議長が再調整する事態になっている。 相談窓口は、議員間のセクハラやパワハラ、マタハラを対象とする。議員が弁護士に相談し、弁護士は調査の上で意見を議長に報告。議長が当事者に注意や勧告し、応じない場合は必要な事項を公表する。19日に議会運営委員会で半村登議長(74)が設置する方針を報告した。2021年施行の改正政治分野の男女共同参画推進法は、地方公共団体による相談体制の整備を明文化。県議会事務局によると、23年6月時点で全国の9府県議会が相談窓口を設け、14都県議会が設置を検討している。
「愛してくれる人がいる限り」。ミルクスタンド「酪」を経営する大沢牛乳の大沢一彦社長はこう決意する=東京都千代田区のJR秋葉原駅前で2023年10月12日、宮武祐希撮影 東京・秋葉原に70年以上にわたって愛されてきた小さな店がある。創業以来、売りは牛乳一本。それなのに朝6時半の開店直後から客足が途絶えることはない。若者や外国人観光客も次々と立ち寄っては、その場で牛乳を立ち飲みしていく。何が人をひきつけるのだろう。 複数の路線が乗り入れるJR秋葉原駅の3階に位置する総武線ホーム(5番線、6番線)に、ミルクスタンド「酪(らく)」の二つの店舗がある。どちらもわずか3坪(約9・9平方メートル)ほどの広さで、店先には値札がずらり。電車が駅に着く度に人が流れ込んでくる。 「きんたろう牛乳、1本」「こっちはコーヒー牛乳ね」。注文とほぼ同時に、店員が冷蔵ケースから瓶入りの牛乳を取り出し、素早くプラスチック製
ふるさと納税制度による他自治体への寄付額が年々増加している世田谷区で、2023年度の流出額(速報値)が、過去最大の約97億円に上ることが区のまとめで明らかになった。区は22年度から返礼品を拡充して寄付額を前年度から倍近く増やすことに成功したが、流出額との差は依然大きい。区は「流出額が100億円を超えるのは時間の問題」と危機感を募らせている。 都内自治体で最多の約92万人が住む世田谷区。区税の流出が深刻化し、流出額の増加は10年連続となった。流出額が急増したのは、ふるさと納税をした人が確定申告をしなくても寄付分の税額控除を受けられる税制改正「ワンストップ特例制度」が始まった15年度からだ。流出額は15年度に約2億6000万円だったが、22年度には約87億円に達し、23年度も約10億円増えた。過去11年間の流出額の累計は約458億円に上…
もしも先生が“夜のアルバイト”をしていたら……。名古屋の繁華街で客引きをしたとして中学校教員が逮捕された。非常勤講師として教壇に立つ一方、ホストクラブでも働いていた。市の正規職員ではないため勤務時間外の副業を認められていたが、市教育委員会は「ホストは想定外だった」と困惑している。 愛知県警によると、20代の男性教員は2月11日夜、名古屋市中区栄4の路上で、私服の女性警察官に「ホストどうですか」などと声をかけたとされる。不当な客引きを禁じる県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕され、風営法違反容疑で送検された。 2022年8月ごろから週2、3回、現場近くのホストクラブで働いていたという。「日中は先生、夜はホストや客引きをしていた。ホストに憧れがあったようだ」(捜査関係者)
持久走記録会に向けて授業の合間に走る児童たち=福岡市博多区の博多小学校で2023年1月24日午前10時14分、山崎あずさ撮影(画像の一部を加工しています) 秋から冬にかけ、学校の恒例行事として定着している持久走やマラソン大会。きつい思いをしながら長い距離を走らなければならず、苦手だった人も多いだろう。こうした大会のあり方が小学校で変わりつつある。学習指導要領の改定などを背景に「楽しさ」を重視する取り組みが広がっているという。現場で何が起きているのか探った。
会場に設けられた大画面には、前傾姿勢になって走り出す人気ゲームの女性キャラクターが映し出されていた。操作していたのは、筋ジストロフィーを患い電動車椅子で生活する清水猛留(たける)さん(25)だ。 手元には、コントローラーもキーボードもない。頭にヘッドホンをしているだけ。念じることで、キャラクターを前進させているのだ。 「『動け、動け』とずっと思っていたら、動きました」 11月19日、東京都渋谷区で実施されていたのは、プレーヤー同士が武器で戦うゲーム「フォートナイト」のキャラクターを、脳波で前進させる実証実験だった。中高生らも参加し、決められたコースを駆け抜けてタイムを競った。 ゲーム好きの清水さんは以前からフォートナイトを楽しんでいたが、最近は手でコントローラーを操作しづらくなっていたという。この日の清水さんのタイムは22秒。「すげえ」。会場から歓声が上がった。その前に挑戦した3人はキャラ
大阪府の元幹部職員ら22人が、府OBのみが再就職できる「特例」のルートを通じ、外郭団体の「指定出資法人」の役員に再就職していたことが明らかになった。しかも特例ルートの適用が認められた場合、どの役員ポストに誰を充てるかという人選に知事が関与していることも判明した。現職職員による再就職のあっせん行為は府職員基本条例で禁じられているのに、府側による法人側への人事介入が常態化しているという。その実態を探った。【石川将来】 「知事の人選、断れない」 実際の手続きはこうだ。まず、特定のポストに再就職させる候補者を現職職員が選び、知事が許可する。次に、民間のメンバーでつくる府人事監察委員会が妥当性をチェック。過去に法人側と利害関係のある職に就いていなかったかなどを調べる。委員会に認められれば、知事がその人物を法人側に推薦し、法人が採用するかどうかを最終判断する。ガイドラインの運用が始まった2014年以降
事実上の開発断念に至った新型コロナウイルスの「大阪ワクチン」。当初、数カ月で実用化できるかのような発言で注目を集めた吉村洋文・大阪府知事は9月、開発中止を受け「森下さんから実際に聞いた話に基づいて発信しているので問題ない」と釈明した。では、名指しされた当人は何を語るのか。ワクチン開発に取り組んだ「アンジェス」(大阪府茨木市)創業者、森下竜一・大阪大寄付講座教授を直撃した。【菅沼舞】 ――開発中止をどう受け止めるか。 ◆期待してくださった方には大変申し訳ない結果になった。安全性は非常に高いことがわかったが、有効性、中和抗体を生み出す能力という点では、米モデルナや米ファイザー製のメッセンジャー(m)RNAワクチンに比べるとまだ十分ではない。今後は中和抗体の反応をいかに高めていくかが課題…
立憲民主党最高顧問の菅直人元首相(75)が暴れ回っている。相手は日本維新の会。「敵地」に乗り込み、街頭で批判演説を続けている。なぜ、政界のトップにまで上り詰めた人物が、野党に過ぎない維新への闘志をむき出しにするのか――。菅氏を追った。【石川将来】 ツイッターで突然、戦いを宣言 5月のある週末。 大阪のシンボル・通天閣(大阪市浪速区)前の路上に菅氏の姿があった。 6月22日公示の参院選に向け、立憲の「大阪特命担当」に就任してから初の大阪入りだった。 マイクを握り、こう訴えた。 現在は衆議院で第3党の維新は、自民党よりも思想が右寄りだ。 立憲を抜いて野党第1党に躍り出れば、自民はもっと右傾化する。 そうなれば、日本は極めて危険な状況になる――。 集まった聴衆に「維新の議席を蹴飛ばしてもらいたい」と呼び掛けた。 参院大阪選挙区は自民、公明党、維新2人の現職計4人が改選を迎え、立憲の新人ら14人が
オンライン取材で長崎市の対応について思いを語る兵庫県明石市の泉房穂市長=長崎市で2022年6月9日午後4時20分、樋口岳大撮影 長崎市が、成年後見制度の保佐人を付けたことを理由に精神疾患のある50代女性職員を失職させた対応について、兵庫県明石市の泉房穂(ふさほ)市長(58)が短文投稿サイトのツイッターで「あまりに理不尽だ」などと批判した。明石市は2016年に市職員が後見人や保佐人を付けても失職しないとする条例を独自に制定した。足が不自由な弟の学校生活を支える少年時代を過ごし、弁護士、社会福祉士でもある泉市長に話を聞いた。【聞き手・樋口岳大】 ――長崎市の対応に何を感じるか。 ◆あまりにも冷酷で理不尽だ。成年後見制度を利用したからといって、公務員に退職を強いるようなことは許されない。行政としてやってはいけない対応で人権侵害だ。 成年後見というのは福祉制度。財産管理について判断能力が低下した人
福井大の60代の女性教授らが国際学術誌に投稿した学術論文で、この教授が、論文の審査(査読)を担う千葉大の60代の男性教授と協力し、自ら査読に関与した疑いがあることが関係者の話でわかった。学術誌の出版社が研究不正と認定し、福井大教授側に論文の撤回を勧告したことも判明。福井大と千葉大はそれぞれ調査委員会を設置して内部調査している。 査読は、著者以外の複数の研究者が第三者の立場で論文の妥当性をチェックし、掲載の可否を判断する。科学の客観性や正当性を担保する極めて重要な手続きで、査読を経た論文は研究者の業績になるため、自ら査読することは研究不正とされ「査読偽装」と呼ばれる。研究倫理に詳しい京都薬科大の田中智之(さとし)教授(薬理学)は「日本で発覚するのは初めて」と話している。 福井大教授は2020…
自民党の「人生100年時代戦略本部」の会合に出席した連合の芳野友子会長(奥中央)。同右は上川陽子本部長=東京都千代田区の同党本部で2022年4月18日午後2時35分、竹内幹撮影 労働組合の中央組織・連合の芳野友子会長は18日、自民党が党本部で開いた政策会合に出席した。芳野氏は雇用安定やジェンダー平等などについての連合の見解を説明し「私たちの政策実現のため、ぜひ自民党にも力を貸していただきたい」と述べた。立憲民主党、国民民主党など野党を支援してきた連合トップが、自民党の政策会合に出席するのは異例。自民党には夏の参院選を前に野党に揺さぶりをかける狙いがあるとみられ、立憲からは「軽率だ」などと芳野氏を批判する声が相次いだ。 芳野氏が出席したのは、全世代型社会保障に関する自民党政務調査会の「人生100年時代戦略本部」(本部長・上川陽子幹事長代理)会合。冒頭以外は非公開だったが、出席者によると、芳野
大国が隣国を武力で脅し、言うことを聞かなければ軍を進めて意のままにする――。ロシアのウクライナ侵攻の意図を一言で言えばそんなところだろうか。この手法は、戦前・戦中の傀儡(かいらい)国家「満州国」(現在の中国東北部)建国をはじめとする、旧日本軍の中国でのやり方に似ているとの見方がある。否定されたはずの大昔の帝国主義的手法が21世紀の今になって復活してしまったともいえそうだが、歴史の教訓から得られるものはないだろうか。愛知大学非常勤講師で、日中戦争や同時期の対日協力政権(傀儡政権)史に詳しい広中一成さん(43)に聞いた。【聞き手・増田博樹/デジタル報道センター】 ――今回のロシアのウクライナ侵攻をどう感じていますか。 ◆中国近現代史を研究する身としては、どうしても過去の日本の中国への侵攻を重ね合わせて見てしまいます。もちろん今回はSNSやサイバー攻撃もあるうえに、一方の当事者が核保有国でもあり
塩野義製薬が開発中の新型コロナウイルスの軽症者向け飲み薬について、政府は最終段階の治験完了前の実用化を可能とする「条件付き早期承認制度」の適用の検討に入った。現在、最終段階の治験が約2000人の患者参加を目標に進められているが、政府は数百人規模の中間解析で顕著な有効性が確認されることなどを条件に適用することを想定。治療薬は買い上げる方向で調整しており、条件が整えば今春中にも実用化される可能性がある。 感染早期の服用で重症化を防ぐ飲み薬は新型コロナ対策の切り札とされ、国内では実用化済みの米メルクの「モルヌピラビル」に加え、米ファイザー製も近く承認される見通しだ。ただ、海外製で供給に制約があり、投与対象者も限られることから、国産治療薬の早期実用化を求める声が出ている。
連合は自由で民主的な運動 私が会長に就任してから、連合と共産党との関係についての私の発言がよく報道される。しかし、前会長の神津里季生氏と同じことしか言っておらず、困惑している部分もある。 そもそも連合の労働運動は、自由で民主的な労働運動を強化、拡大していくというところから始まっている。その点で共産とは考え方が違い、相いれない。現実的にも、連合の組合と共産党系の組合は職場、労働運動の現場で日々競合し、しのぎを削っている。 労働組合に関わりのない方々には分かりづらいことかもしれないが、戦後の労働運動や連合が結成に至った経過などを説明すれば理解していただけるはずだ。 立憲が何を目指しているかわかりにくくなった 先の衆院選では、共産が選挙運動の前面に出たことによって、現場によっては選挙対策本部に入ることや、街頭で弁士として並ぶことが難しい事態が起きた。結果として連合の動員力が発揮できないことがあっ
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