刑事裁判に市民の視点を取り入れる「裁判員制度」が導入されて5月で10年を迎えた。裁判員に選ばれた人々は殺人などの重大事件に向き合い、悩み抜いて有罪・無罪を判断してきた。中には法律の「プロ」の固定概念を打ち壊す、量刑相場を大きく越えた判決もある。市民感覚を反映したはずの裁判員判決だが、一方で高裁での破棄率は上昇。現状と課題を追った。 【グラフ】裁判員裁判対象罪名の起訴率の変化 ******* 「無期懲役に処する」 宮崎地裁の裁判員裁判は16年2月、求刑(懲役25年)を超える判決を導いた。 被告の男は、女性を殺害、遺体を切断したとして殺人や死体損壊の罪に問われていた。「猟奇的で非人間的」と断じた判決は、有期刑の上限(同30年)も上回った。 担当検察官だった若杉朗仁弁護士(福岡県弁護士会)は法廷で目を閉じたまま判決を聞いた。「これが市民感覚か」 法律の「プロ」として事件に向き合ってきた自負があっ