2.中小企業を巡る環境の変化と開業率 いくつかの視点で開業率を見てきたが、長期的にはそのいずれもが低下をしてきた様子が確認できた。その中でも、総務省「事業所・企業統計調査」による企業数で見た場合の1980年代以降の開業率の低迷と、廃業率との逆転は個人企業の開業率低迷によるところが大きい点を確認することができた。それでは、こうした状況はいかなる原因で生じてきたものであろうか。 この問題を考える出発点は、開業率は企業に着目した指標であるが、実際の開業行為の大部分は「人」の就業行動の一環として行われるということである16。開業率変動の要因を探る上ではマクロ経済要因とともに、人口に関する分析や、人々の動向の背景にある社会的な諸制度や意識の変化に関する分析を欠かす事はできない17。そこで、人口・経済・社会的な視点に立ち、開業率の低下や個人企業の低迷と、これと軌を一にした現象である個人企業、さらに自営