昨年6月、信州大学の「脳神経科学と社会」という題の講演で、『現代社会の中の「価値」を、脳科学が根本的に変えてしまう可能性は、ない。脳科学の進歩が私たちに伝えていることは、私たちが、私たち自身のことを、いかに、まだまだ知らないのかであり、その意味で、私たちは謙虚にならざるを得ないだろう。』と話しました。 この『現代社会の「価値」を、脳科学が根本的に変えてしまう可能性はない』とは、どういう意味かという質問を頂きました。実は、ちょうど、「脳神経科学の現在と将来」という題で小文を書きつつあるところなので、その目的もかねて、こちらに少しまとめてみます。 この時は、講演が一般市民(+学生)向けでしたから、専門家ではない方に伝えたいことを言いました。つまり、脳科学の進歩は、社会の中の価値観を変えてしまうのではないかという「漠然とした危惧」を持っている方がいますが、そんなことはありえないという意味です。た