2010年のノーベル文学賞作家が80年代後半に発表した小説。バルガス=リョサの小説は『楽園への道』以外今ひとつ相性が良くなく、これもそんなに楽しめなかった。読んでいて異常な既視感を感じていたのだが(ノーベル文学賞作家と自分を比べるのはおこがましいが)ああ、こういう小説を書こうとしていたんだ、わたしは、と気づき、同時に自分が小説を書く理由をひとつ失い、そして自分が書こうとしていたものを自分で読んだらつまらなかった、という失望が訪れる。 物語は作家(バルガス=リョサ)自身が、故郷から遠く離れたフィレンツェ(ダンテが生まれ、マキャベリが活躍し、ルネサンスの文化が花開いたメディチ家のお膝元)で、ギャラリーに足を踏み入れ、そこでアマゾンに住む部族を撮影した写真を偶然に目をする。そこには(決定的な確証はないものの)学生時代に交友を結んだ友人の姿らしきものがあった。現在のフィレンツェ、若かりし頃育んだ友