「欧米と比べて日本は~」という言い方をされることがよくある。しかし、この映画を観れば、ヨーロッパとアメリカは社会システムや文化において大きく異なり、「欧米」とひとくくりにはできないことがよくわかる。その映画は、現在公開中のマイケル・ムーア監督の最新作『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』だ。 ムーア監督は『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002年)でアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞し、『華氏911』(04年)ではカンヌ国際映画祭の最高賞(パルム・ドール)を受賞したドキュメンタリー作家であり、一流のジャーナリストである。今作は、ムーア監督が主にヨーロッパの国々を訪問し、その国の優れた生活習慣や政策を取材し、アメリカでも取り入れたらどうかと提言するという内容である。 最初に訪問するのはイタリア。ムーアを自宅に招いた夫婦は、年に30~35日もの有給休暇があって、消化できなかった休