男やもめになって二か月ほどの父は、いつ訪ねて行っても静かな家でローカルラジオを聴きながらちゃんとソファに座っている。 一人だからとテレビの前で一日寝そべっているようなタイプの人じゃなかったことをを今更知って「結構立派な人だったんだな」などと内心感心した。 知らないことばかりだ。 持参した花を活けていると、ラジオが「豊平川で今年最初の鮭の遡上を確認した」と告げた。 「おお、来たか」 と父は嬉しそうに言った。 「おじさんとかおじいさんって上ってくる鮭を延々と見てるよねえ」 私がちょっと冷やかすと 「あれは面白いなあ」 としみじみ言う。 「ずっと見てられるな。四年ぶりに、よくかえってきたなーって。」 「えっ?毎年帰ってくるんじゃないの?」 父は一瞬、どこから突っ込んでいいか分からない戸惑いの顔で私を見る。 素っ頓狂な声を出してしまってから自分の言ったことを考えなおして、一拍置いて爆笑した。 そう
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