今回の「おんな城主直虎」はついに徳川家最大の黒歴史、信康事件を主題に取り上げてきた。ドラマ中では信康は賢く、家臣からの信頼も厚い名君として描かれている。従五位の下の位を与えるという信長の申し出も徳川家に不和を招き寄せるための策だと即座に見抜き、辞退する慎重さも見せた。もしここで信康が官位を受け入れていたら、朝廷から官位をもらった義経と同じような立場になっていただろう。 しかし、信長の周到さは信康の更に上を行っていた。信康は大人しく信長の手駒になるような男ではないと見るや、今度は難癖をつけて排除してしまおうというのだ。海老蔵演じる信長は声こそ荒らげないものの、いやだからこそかえって異様な迫力を醸し出している。洋装に身を包み這いつくばる酒井忠次を見下ろす信長の姿は魔王そのものだ。 「おんな城主直虎」は、今まで数々の革新的なドラマ展開を行ってきた。徳政令という地味なテーマを前半のドラマの主軸に据