安倍首相がアベノミクスを掲げて経済再生を唱えても、現状では街のハローワークに連日多くの人が詰めかけている。そうした場所に通う彼らはいかなる人生を歩んできたのか? 作家の山藤章一郎氏がリポートする。 * * * 池袋サンシャイン庁舎3階のハローワークに足を伸ばしてみた。20代後半のヒゲを生やした男に声をかけた。ヒゲは飲食チェーンで店長だったと明かしてから、言い継いだ。「吊るしたロープのこの手を放したら、一気に陥落する気分の毎日ですよ」 壁、ドア、いたるところに紙が貼ってある。「あとをつけて執拗に勧誘する人がいるので注意してください」ヒゲが低声で教えてくれた。 「歩合制の保険の販売員の人さらいに、生命保険が来てんですよ。不安定な労使関係だからハローワークに登録できない。出口で待ち構えてるんです」 ヒゲが携帯をつないでくれて、翌日、剥げた革ジャンに会った。60人規模の新宿のIT企業の〈野良電波〉