2021年のノーベル化学賞は,不斉有機触媒の発展に貢献したドイツのマックスプランク石炭研究所のリスト(Benjamin List)教授,米プリンストン大学のマックミラン(David W.C. MacMillan)教授の2氏に授与される。 化学工業や医薬品の製造など,触媒は人間社会に不可欠な道具となっている。特に,鏡像異性体(鏡に映した時に対称的な立体構造を持つ異性体)の一方だけを作る不斉合成反応は,医薬品の製造で重要になる。生物の体を構成するアミノ酸は片方の鏡像異性体(L体)だけでできており,同じ組成の物質であっても1対の鏡像異性体は体に及ぼす作用が互いに大きく異なるためだ。 1990年代の終わりまで,不斉合成の触媒は2タイプしかなかった。1つは生体内で働く酵素を用いる方法で,もう1つは金属錯体を用いた触媒だ。酵素は複雑な形状の分子で制御が難しく,金属錯体は制御しやすいもののコストが高く環
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