あれから6度目の冬季五輪で熱戦が繰り広げられている。 そんなこの時期になると、ある伝説のフリースタイルスキーヤーを思い出す。モーグルで五輪出場を目指していた森徹さんのことを――。 里谷多英がモーグルで冬季五輪日本人女性初の金メダルを獲得した1998年の長野五輪。24年前、徹さんも里谷が脚光を浴びたその大舞台で、得意の『ヘリコプター』を披露しているはずだった。持ち味のスピードのある切れのいいターンで観客を沸かせているはずだった。 しかし――五輪は幻となった。彼は本来いるべきゲレンデの斜面ではなく、病室のベッドにいた。そして、その夏、25歳の短い生涯に幕を閉じ、天国へと旅立った。 さみしがりやで人で賑わう場所が大好きで、人が好きだった。目立ちたがりやで人懐っこく誰からも愛されていた。人生を全力で走り続けた徹さんは、命のともしびが燃え尽きるまでモーグルを愛し、病と闘い抜いた。 祖父も父も兄もスキ