いつのことだか思い出してごらん ドイツ人は毒ガスを発明し、イギリス人は戦車を発明し、科学者は同位体元素や一般相対性理論を発見した。この理論によると、形而上学的なものは一切なく、すべては相対的であるという。(p.5) <<感想>> 「二〇世紀史概説」である。これが白水社のエクス・リブリスだと知っているから文学作品なんだろうと思うだけで、岩波新書だったらきっと歴史の本だと思ったに違いない。 そしてそれは間違いというわけでもなく、ヨーロッパの二〇世紀史が本作の主題であることは確かだ。むしろ説明が必要なのは、じゃあこれが何で文学作品なのか、ということの方かもしれない。 例えば『戦争と平和』は実際の歴史的事件を背景に架空の物語が展開される。あるいは、みす〇書房のドル箱こと『夜と霧』は、歴史的事件に遭遇した著者がその体験談を物語る内容となっている。 これに対して本書は、書かれていることは(恐らく)大半