西日本新聞社は1992年、事件の容疑者として逮捕された人の「言い分」を記事で伝える企画「事件報道の改革『福岡の実験』―容疑者の言い分掲載」を始めました。企画の狙いは容疑者の人権を守り、えん罪を未然に防ぐこと。事件報道は当時、警察からの情報に依存することが一般的でした。そうした中、取材班は福岡県弁護士会が90年に設けた当番弁護士制度を窓口に、容疑者への取材に取り組みました。 容疑者の言い分を伝えるという西日本新聞社の企画は「人権報道に新局面を開いた報道界の実験」として93年の新聞協会賞を受賞。取り組みはその後、全国の報道機関に広がりました。 93年に入社し、新人記者として警察や弁護士を取材し企画にも携わった編集局クロスメディア報道部長の相本康一さんに、当時の報道の意義や、「福岡の実験」の試みが現在の西日本新聞社にどう受け継がれているかについて聞きました(インタビューは2023年6月に実施しま