1.はじめに 2014年5月にEU司法裁判所がグーグルに対して個人のプライバシー侵害に基づく検索結果の削除を命ずる判決を下して以来、「忘れられる権利」に関する議論が活発になされている。 2014年7月に、英国貴族院のEU委員会がEU司法裁判所判決の結論に反対する報告書を公表したところ、これに対して、同国のデータ保護機関の長が反論書簡を公開するといったやりとりがあった。また、9月には、欧州委員会が、EU裁判所判決後に流布する様々な批判や懸念をいずれも「神話(myths)」であるとしてこれに反論する、一般大衆向けのファクトシートを公表している。 日本でも10月に、東京地方裁判所がグーグルに対して検索結果の削除を命ずる仮処分決定を下して注目を集めている。 以下、これら最新の動向を紹介することとしたい。 2.欧州における議論 英国貴族院の報告書 2014年7月30日に英国貴族院のEU委員会が、「E