目を血走らせ、異常なハイテンションの暴力的な演技をさせれば右に出る者がなく、また、下がった眉毛と子犬のような潤んだ瞳で母性本能をもくすぐる、相反する極端な二つの魅力を持つ稀有な俳優が、ニコラス・ケイジだ。 彼の代表作に、『リービング・ラスベガス』がある。ラスベガスで好きな酒を飲みまくって死んでいこうとする、仕事も家庭も失ったアルコール依存症の男の物語だ。ニコラス・ケイジの酩酊演技は、凄まじいリアリティと説得力を持ち、快楽と苦しみの狭間で破滅していく男の弱さと美しさを表現した。その儚い姿は、舞台となる虚飾に彩られたラスベガスという街に重なっていく。『リービング・ラスベガス』によって、アカデミー主演男優賞をはじめ、その年の主要な演技賞を軒並み獲得し、一躍、演技派俳優として名を馳せたニコラス・ケイジは、その後、意外にも多くのアクション映画や商業的な大作映画にも次々出演し、ハリウッドの顔になってい
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