この取材がなければ、私はこの村の存在を知ることもなかっただろう。旅行者が訪れる観光名所もない。赤い鳥居の鎮守を中心に人々が暮らす、穏やかで慎ましい村である。 八戸市から国道45号線を南下するドライブ旅行なら、左手に広がる太平洋と浜がおりなす絶景に見とれているうちに、右手の田畑に点在する家や商店に気を留めることもなく、そのまま通り過ぎてしまうかもしれない。 3月11日、そんな美しい北国の田園風景は失われてしまった。 両側に田園と山林が続く中を20分ほど走っただろうか。村のゆるキャラ「鮭の子のんちゃん」の巨大な像を右手に過ぎたあたりから、風景がどこか異常なことに気がつく。両側の家が片っ端から壊れ、傾き、あるいは崩れて建材とゴミの山になっている。商店はどれも、1階が骸のようにぽっかりと空洞になっている。津波が押し寄せて1階を洗っていったのだ。 これは一体何なんだ。海はどこにも見えない。なのに、得
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