献本御礼。安岡氏のことは以前isedで僕がQWERTY配列への言及したことについて、議事録に詳細なコメントを寄せていただいた時から気になっており、/.jpの日記は欠かさず拝読していた。本書は収穫逓増の議論で有名になったQWERTY配列の神話、即ち「素早くタッチタイプしてもタイプライターのアームが絡まないよう、わざと遅く入力するよう工夫した」という説を丹念にタイプライターの歴史を追うことで覆した貴重な技術史書だ。ネットワーク効果や収穫逓増の例として、QWERTY配列の普及は必ず引き合いに出される例だが、本書を読めば史実はそんな単純ではなかったことを知らされる。 僕はQWERTY配列や収穫逓増の話を最初に『ネットワーキング―情報社会の経済学』で読んだが、本書は安岡氏が同書への批判を編集部に寄せたことを契機に企画されたらしい。QWERTY配列がデファクト標準になる過程にポール・アラン・デービッド