COVID-19が猛威を振るいはじめる直前、2020年1月に青葉市子は沖縄に渡った。沖縄本島を拠点に、久高島、座間味島、奄美大島をはじめとする島々に赴き、その記録、そして記憶に触れる。2週間弱ほどの滞在を経て青葉市子は、大作『アダンの風』のベースとなるプロットを書いた。 それを元に作曲家の梅林太郎、エンジニアの葛西敏彦、写真家の小林光大と、互いの境界線が曖昧になるような、文字どおり渾然一体の制作によって『アダンの風』は完成した。作曲、レコーディング、ミックスの全てが同じタイムライン上にあったという通常ではありえない工程を踏み、マスタリング当日の朝まで作業は続いた。どこまでも異例であるが、そうすることでしか『アダンの風』は生まれえなかった。一体、何が4人をそこまでにさせたのか? 詳しくは本稿と併せて公開されている作品インタビューを読んでいただきたい(青葉市子が『アダンの風』で見つめた、時代の