戦地から帰還した数十万人の米軍兵士が、爆風の衝撃で脳に損傷を受けている。見えない傷を抱え、認知能力や心の障害に苦しむ兵士を救う方法はあるか。 文=キャロライン・アレキサンダー/写真=リン・ジョンソン 2001年から2014年までの間に、軽度の外傷性脳損傷(TBI)と診断された米軍の兵士と退役軍人はおよそ23万人にのぼる。その大半は爆発現場に居合わせた兵士で、頭痛、運動障害、睡眠障害、めまい、視覚障害、耳鳴り、情緒不安定、認知・記憶・言語の機能障害など、さまざまな症状に悩まされている。 こうした症状は心的外傷後ストレス障害(PTSD)とよく似ている。しかもアフガニスタンとイラクでの米軍による軍事行動では、当初の数年間、兵士が爆発の場に居合わせたことは記録されなかった。こうした事情により、TBIに苦しむ帰還兵の正確な数はわかっていない。 脳に「見えない傷」を負った兵士たち 多くの帰還兵がこうし