「会話を盗聴されている」といった妄想や不眠に悩まされ、2005年、医師から「統合失調症」と言われた東京都の男性会社員(55)。通院を続けたが、診察は毎回、数分間で終わる。薬の副作用で体はだるく、気分はさらに落ち込んだ。 「このままでは、夫はだめになる」。妻(48)が知人のカウンセラーに相談し、昨年1月、紹介された神奈川県藤沢市の三吉クリニックを訪ねた。 まず、ケースワーカーの広瀬隆士さんが1時間、話を聞いた。男性は、20歳代後半の4年間、東ドイツに留学した経験や、仕事の悩みについて話した。 留学先では、電話の途中で雑音が入り、盗聴されていると分かった。日本からの手紙は、常に封を開けられた跡があった。共産党政権下で、盗聴や検閲は日常茶飯事だった。 食堂などで相席になった人に話しかけても、会話が続かない。話が曲解され、公安当局に通報される恐れがあると考えた相手が、口をつぐむのだ。 「盗聴器やス