熊本地震では避難所となった体育館で多くのお年寄りも過ごした=熊本県益城町で2016年4月16日、岩崎邦宏撮影 災害時に支援が必要な高齢者や障害者ら「要援護者」が、県内に少なくとも3万人以上いることが全17市町への毎日新聞の調査で分かった。しかし、要援護者が避難する「福祉避難所」の収容能力は、比較可能な13市町で計約5%にとどまり、災害時にほとんど機能しない恐れのあることも判明。熊本地震では避難所などで震災関連死が表面化しており、県内でも災害弱者への抜本的な備えが急務だ。【岩崎邦宏】 災害時要援護者は、自力避難が困難で支援を要する被災者。2013年成立の改正災害対策基本法で、市町村に名簿の作成が義務付けられた。 この記事は有料記事です。 残り1368文字(全文1622文字)
熊本地震で被害が大きい熊本県 益城 ( ましき ) 町と熊本市で、危険な自宅に住み続けたり、症状が重くなったりして、緊急支援が必要になっている障害者が少なくとも163人いることが、民間支援団体の全戸訪問調査でわかった。益城町では、調査に応じた障害者の1割を超えており、県は福祉関係機関を通じ、福祉サービスの提供や住居の確保などの対策に乗り出す方針だ。 障害がある人たちの現地支援を続けているNPO法人「日本相談支援専門員協会」(埼玉県)などの団体が25日までに、益城町と熊本市東区、南区で、町や市の依頼を受けて調査を実施。高齢者を除く18~64歳の障害者手帳を持つ約4700人を訪問し、面会できた2486人のうち、163人(6・6%)について、新たな住居の確保や福祉サービス提供などの緊急支援が必要と判断した。 益城町では、面会できた293人中、支援が必要と判断されたのは34人(11・6%)で、この
熊本地震の支援で県外からボランティアに来てくれた人たちが、初めて聞く方言に戸惑ってしまうかもしれない――。福岡女学院大学人文学部メディア・コミュニケーション学科の二階堂整教授などのチームは、県外からの訪問者が地元住民とのコミュニケーションを円滑に図れるようにするために、2016年4月23日に「熊本支援方言プロジェクト」を立ち上げ、方言語い集をダウンロードできるウェブサイトを開設した。 同プロジェクトはまず、「医療・福祉関係の方言」「身体の部位を表す方言」の語い集をそれぞれ作成、公開した。熊本県の方言は北部(熊本市など)、南部(八代市など)、東部(阿蘇市など)の3地域で異なるため、地域ごとに分けて作成されている。ただし、「医療・福祉関係の方言」の東部版は5月6日現在、未完成のため公開されていない。 4月28日には、一般向けの方言ガイドを公開した。県外からの支援者・ボランティアを想定している。
車中泊で亡くなった母恵子さんの遺影の前に座る長男の光彦さん=熊本県氷川町で2016年4月29日、今手麻衣撮影(一部画像を処理しています) 熊本地震後に急性心不全で死亡し、熊本県が震災関連死とみられると発表した同県氷川町の稲葉恵子さん(73)は、歩行が困難で転びやすい進行性核上性麻痺(まひ)という難病を患いながら車中泊を続けていた。家族は難病や障害のある被災者向けの避難所の存在を知らず、要支援者への周知のあり方が災害時の課題として改めて浮上した。 夫(76)と2人暮らしをしていた稲葉さんは、4月16日夜から隣接する宇城市の宇城総合病院の駐車場などで、同病院近くに住む長男光彦さん(49)が用意したワゴン車に寝泊まりしていた。2人を心配した光彦さん夫婦も別の車で車中泊を続け見守っていたが、20日未明、夫がぐったりしている稲葉さんに気付き、すぐに同病院に運んだものの死亡。県が29日、震災関連死とみ
医療やボランティア活動などで熊本県や大分県の被災地に入る人たちと、方言を使う地元の高齢者がうまくコミュニケーションできるよう、言語学者らが語彙(ごい)集を公開している。医療分野を優先し、まず体の部位を表す言葉や基本的な感情や動作の表現をまとめた。カウンセリング、ボランティアで必要とされる語彙も随時追加していく。 熊本は、北部(熊本市など)、東部(阿蘇市など)、南部(八代市など)の地域ごとに方言がある。今回の語彙集は、高齢者が使う表現を取り上げ、地域の違いを対照させたものもある。たとえば「ビンタ」は、主に北部では「ほお」の意味だが、南部では「頭」の意味で使うこともある。 診療中に指をさして使えるよう、人体の絵に各部位を示す言葉を書き込んだ図を作った。声をかけられた人がほっとして心を開いてくれるよう、あいさつや受け答えの表現も紹介している。 大分県は、支援拠点のある竹田市など大分南部の語彙集か
熊本地震の被災地にいる外国人向けに、大阪大は避難情報を外国語に翻訳し、大学のホームページに載せる取り組みを始めた。外国人向けの避難所を開設している熊本市国際交流振興事業団と連携し、避難施設や交通情報を現地の外国人に活用してもらう。 外国人の防災対策を研究する塚本俊也特任教授が自治体のホームページなどから情報収集し、大学の留学生や外国語学部生ら学内外の約30人が英語、中国語など10言語に翻訳している。 熊本県によると、昨年末現在、県内の在留外国人は約1万800人。避難生活を送る人も多く、熊本市国際交流会館には7カ国約30人が避難しているという。 避難所にいる通訳や、食べ物の戒律があるイスラム教徒向けの支援食など外国人特有の情報も掲載。塚本特任教授は「被災時の情報は日本語が主で、外国人住民の不安は大きい。大学の人材を生かした支援ができれば」と話す。 情報は阪大未来戦略機構第五部門のホームページ
車椅子に乗って避難所にいる馬場トミ子さん(左)と娘の京子さん=熊本市東区の市立長嶺中学校で2016年4月17日、山本愛撮影 やまない余震とライフラインの復旧の遅れで、避難者が増えている。避難生活でとりわけ困難を感じているのが、病気や障害がある「災害弱者」だ。 熊本県益城(ましき)町広崎の坂本清文さん(66)は妻紀久子さん(63)と近くの小学校の教室に避難した。7年前に脳内出血で倒れ左半身不随で、要介護5。電動の介護用ベッドは避難所に持ち込めず、教室の床に段ボールと毛布を敷いて寝る。おむつは紀久子さんが交換するが、停電が続く中夜の介護は難しい。 入浴は普段デイサービスに任せており、今は水でぬらしたタオルで体を拭くのが精いっぱいだ。「いつまでこんな状態が続くのか」。心労も重なり、紀久子さんは先の見えない避難生活に頭を抱える。
スタッフに質問しながら防災のチェックをする「障害者防災対策支援協会」の堀清和さん(右端)=大阪府高槻市で2016年2月12日、三浦博之撮影 災害時に逃げ遅れやすい障害者が被害に遭うのを防ごうと、大阪市西区の一般社団法人が、障害者が利用する福祉施設の防災体制づくりをサポートする事業に乗り出した。東日本大震災で障害者の死亡率は被災者全体の約2倍だったとされる。障害者の防災の充実が急務としてノウハウの普及を目指している。 「備蓄品はありますか」「送迎時の災害に対応できますか」−−。障害のある中高生が放課後を過ごす大阪府高槻市の施設「ふらっと」を訪れた一般社団法人「障害者防災対策支援協会」(障防協)のアドバイザー、堀清和さん(39)がスタッフに矢継ぎ早に尋ねた。 この診断は、ハードやソフト、障害特性への配慮など五つの領域で80〜100項目にわたって現状をチェックし、5段階で評価する。評価報告書が施
災害時に高齢者や障害者ら弱者の命を救うための「避難行動要支援者名簿」に関する自治体アンケートでは、個人情報保護の壁で自治体が苦慮している姿が浮かび上がった。また救助された人たちが一時生活する「福祉避難所」は開設までに時間がかかり、障害者や高齢者への負担だけでなく、施設スタッフらの混乱も招いていた。1995年の阪神大震災や2011年の東日本大震災を経ても、災害弱者対策はまだまだ道半ばだ。(1面参照)【石川貴教、木村健二】 要支援者名簿を有効活用するには、消防機関や民生委員など避難を手助けする支援者に名簿情報を災害前に提供することが重要だ。提供には要援護者本人の同意を得るか、または条例で規定する必要がある。だが5割超の要援護者の事前提供ができない状況だ。本人同意を得る作業が膨大で、自治体の大きな負担になっていることが背景にある。 この記事は有料記事です。 残り2513文字(全文2881文字)
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く